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テレビCMを打ちまくる「Temu」は危険なのか 激安を実現するビジネスモデルとは

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月9日 6時5分

 Temuはスーパーボウルで30秒CMを4本も放送した。さらにスーパーボウルに合わせたキャンペーンのギフトやクーポンで1500万ドル(約22億円、同)を使ったと報じられている。その効果は絶大で、アプリのダウンロード数が34%増加した。

 ちなみにCMや格安商品が話題になったことで、あらためて商品のクオリティーや顧客満足度の低さがクローズアップされることにもなった。

 Temuの広告重視戦略はインフルエンサーとのコラボからも読み取れる。YouTubeなどでもインフルエンサーとのコラボを狙っており、日本でもあちこちにコラボ要請のメールを送っていることが分かっている。とにかく露出を増やして、オンラインサイトやアプリにアクセスしてもらおうという狙いだ。

 そんなTemuだが、確かに怪しいところもある。Temuの名称は「TEAM UP、PRICE DOWN(チームアップ、プライスダウン)」を意味し、本部はボストンということになっているが、その実態は中国系企業だ。Temuの運営元である親会社の「PDDホールディングス」も中国に拠点を置く正真正銘の中国企業。PDDは、2023年に本社の登録住所を法人税が低く、タックスヘイブンとして知られるアイルランドのダブリンに移しているが、節税だけでなく、中国色を消そうとしたとの批判もある。

 PDDは中国国内で「Pinduoduo」というショッピングサイトを運営し、コロナ禍で外出が禁止されていた時に、生産者と消費者を結ぶビジネスを始めて大成功した。中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)の支援を受けながら中国で効果的に広告を展開。今は激安サイトやアプリを運営し、Temuの姉妹サイトになっている。

●「直販モデル」でコスト削減

 筆者の印象では、Temuのビジネスは純中国国産で、中国ビジネスの集大成とも言えるものだ。Temuは、黒船ならぬ、真っ赤な国旗の中国から送られた「赤船」とでも言えるのではないかと思う。

 というのも、生産やサプライチェーンはほぼ中国で完結しているからだ。特徴的なのは、消費者直販モデル。卸売業者や流通業者のような中間業者を排除してコストを削減し、消費者に商品を直接売るビジネスモデルだ。ユーザーと生産者であるサプライヤーを直接つないでいる。

 そして、「世界の工場」として知られてきた中国特有のビジネス環境がベースになっている。Temuのサプライヤーのほとんどは中国に拠点がある会社で、Temuが提供するソフトウェアを導入して生産の最適化を行い、コストを最小化する。そして消費者の需要を瞬時に売買につなげられる体制を敷いている。Temuはこれを「革新的なサプライチェーン最適化技術」であるとうたっている。確かに低価格を実現しているが、その裏で過酷な負担がサプライヤーにのしかかっているようだ。

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