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2028年、街から書店が消える? “救世主”になるかもしれない「2つ」のビジネスモデル

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月15日 6時5分

 同書店は、16坪(地上1階、地下1階)の空間に364の棚を設置し、個人や法人に月額4850円から貸し出しを行う。新刊書と古書の両方を扱い、本との多様な出会いを創出する。棚を貸し出すことで経営リスクを分散し、開店から3カ月で棚の利用率は85%に達するなど、黒字経営を維持している。

 全棚の30%を法人契約が占めており、それが経営の安定性を高めている点が特徴だ。ちなみに、起業のきっかけになった本やオススメの本などが並んでいる。

●「ほんまる」を通じて、書店の独立開業支援も視野に

 再販制度との整合性など法的リスクを事前に排除したことで、企業の参加が実現した。企業側にとっても専用の棚を持つことは自社を深く知ってもらう機会や広告的な価値があり、参加が多いという。「ほんまる」には、地方自治体やデベロッパー、鉄道会社などから出店オファーがあるそうだ。

 一方で、課題も挙げられる。デジタルに不慣れな高齢層へのサポートや、棚の位置による人気の偏りへの対策だ。特に足元の棚の人気が低く、価格設定の見直しなども検討している。

 日本出版インフラセンターのデータによると、書店数は2003年の2万880店から2023年には1万918店まで減少している。この現象について、今村氏は「多すぎた店舗数が適正値に戻っているだけかもしれない」と、1990年代の書店バブル期に急増した書店数が調整過程にあるのではないかと分析する。

 しかし、このままでは適正値すら割り込みかねないと危機感を抱き、今村氏は「個々の書店の生き残り策ではなく、業界全体での秩序ある撤退と再編がカギになる」と語る。業界全体で協力し、計画的に対応していく必要性が高まっているという考えだ。

 今村氏は「ほんまる」を通じて、書店の新たな可能性を模索するだけでなく、独立系書店の支援も視野に入れている。「将来、独立開業を目指す人々への支援も行いたい」と語り、書店業界全体の活性化を目指す。具体的には「ほんまる」での経験を生かした経営ノウハウの提供や、融資支援などを計画している。

 「ほんまる」は、書店という場の可能性を広げるだけでなく、既存産業の再構築という点で、出版業界全体の未来を考える契機となる事例と言える。

●無人化とシェア型、2つのモデルが示す可能性

 無人化とシェア型という異なるアプローチで、両者は書店業界の経営スタイルを変えようとしている。しかし、これら2つのモデルは、単なる経営手法の変化にとどまらない。共通するのは、従来の書店経営モデルの常識を打破しようとする姿勢だ。

 書店数の減少、電子書籍の台頭、人件費の高騰など、業界が直面する課題に対し、それぞれが独自の解決策を提示している。

 しかし、当然ながら課題も存在する。両モデルとも、これから進化していく過程にあり、これらの取り組みがどこまでスケールするか、そして業界全体にどのような影響を与えるのか、これからが正念場といえる。

(カワブチカズキ)

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