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700万人が訪れた「びっくりドンキー」系列の“エコ”な観光施設 「いいこと」アピールしない哲学

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月23日 8時0分

 最近では、同窓会のイメージで過去の参加者を対象に中高生向けに単発のイベントを実施したという。「人間関係が切れるわけではないので、少し大人の考え方で出会えるのは面白いですよね。今後は大人向けの教育プログラムなども提供していきたいです」(葛西さん)

●「放牧」「草地農業」を推進 95%以上は「牛舎飼い」の現状

 えこりん村では、来場者に体験を通じて環境問題について考えるきっかけを提供することを大きな目的としている。その一方、同施設内で具体的に取り組むのが「放牧」「草地農業」の推進だ。

 ニュージーランドでは、穀物飼料などに頼らず、健康な土づくりと、そこから育てた健康な牧草を牛に食べさせる「管理放牧型農業」が主流だ。

 一方日本では、牛舎で穀物飼料を与えて育てる「牛舎飼い」が一般的である。少ない面積で多くの牛を出荷できるため、効果的だ。しかし、牛舎で与えられる穀物飼料の生産は地下水の枯渇につながるだけでなく、日本に輸入する過程で二酸化炭素も排出されるので、地球環境に悪影響を与える側面がある。

 「北海道の酪農と聞くと、広大な牧場で牛や羊をのびのびと育てている様子を想像する方が多いかもしれません。しかし実際にはその多くは牛舎飼いで、集約放牧されている頭数は3%ほど(※)。どちらがいいということはありませんが、資源が限られた日本で食料自給率を上げていくためには、土と草の力だけで牛たちを成長させる管理放牧型農業を実践していく必要があると考えています」(青木さん)

※:農林水産省「公共牧場・放牧をめぐる情勢」より

 同社はこの管理放牧型農業をえこりん村で実践し、多くの羊を育てている。羊は牧草の成長に合わせて放牧地から放牧地へと定期的に移動させ、土と牧草の力で育てる放牧を成功させている。

 また、管理放牧型農業の研究・普及を目的とする草地農業を学ぶ「グラスファーミングスクール」を1996年より毎年共催し、普及活動に励む。

 ちなみにびっくりドンキーでは、穀物飼料は使わず牧草主体による放牧飼育で育ったビーフのみ使用しているそうだ。

●「観光施設に寄せすぎた」反省も

 えこりん村は2006年のオープンから今日まで、観光施設として運営を続け、多くの人々が来場してきた。農薬や化学肥料に頼らない循環型農業の必要性や、環境や生態系保全の重要性を訴えるのがえこりん村の真の目的だ。しかし、観光だけを楽しむ来場者が多いという課題を抱えている。青木さんも「自然や動物に触れて美しかった、かわいかった、楽しかった……で終わってしまい、食の安全や水の枯渇、地球温暖化、生物多様性の保全など本来伝えたいことが伝わりづらいという面もあったのは事実」と話す。

 えこりん村は、2024年10月以降に西エリアのリニューアルを実施する。具体的な変更点はまだ非公開だというが、「SDGsをテーマに楽しく学べる自然環境体験学習フィールド」への転換を目指していく。

 「ただ多くの人に来てもらうのであれば、もっとびっくりドンキーの名前を出すなどいろいろ方法はありますが、地球環境に対して一緒に考える仲間を増やしていくことが重要なのです。そのくらい、仲間を増やしていかなければ、もうそろそろ地球は持たないんじゃないかという危惧もあります」(青木さん)

 環境問題は、企業が単体で取り組むだけでなく、社会全体で連携・協力して取り組むべきもの――そんな考えのもと、多くの仲間を増やしてきたアレフ。今後のリニューアルを機に、北海道・恵庭から地球環境について興味を持つ仲間をさらに増やしていく様子に、今後も目が離せない。

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