「辞めた会社に戻りたい」――増える“元サヤ転職”、その魅力と難しさ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月12日 7時45分
それが結果的に良かった。快く出迎えてくれた社員は想像以上に多かったけど、特に難しかったのが、プロパーの先輩社員との関係です。あからさまに嫌な顔をされたり、新しい提案をしても無視されたり。でもね、そこは自分でなんとかするしかないので、一兵卒のつもりで新人の時にやったことをやりました。
早めに出勤して社内の掃除やらゴミ捨てをやりながら、周りの人の顔や名前や、何がどこにあるかも覚えるようにしました。そうしているうちに一緒にやってくれる人が出てきてくれて、プロパー社員たちの目も変わりました。結局、仕事って人間関係だし、人間関係は自分でどうにかするしかない。自分からドアを開けて、耕すしかない。それが結果的に、自分の評価につながるんです。
出戻りして4年が経ったA氏は、今では若手だけじゃなくシニア社員からもキャリアの相談を受けると「迷わず、いち、にの、さーんで飛び出せばいい。一度会社を出ると、古巣の良さがわかることも多いですから」とアドバイスしているそうです。
いずれにせよ、A氏の経験は人間関係の難しさを物語るものでした。
辞める原因も人間関係なら、続ける背中を押すのも人間関係。元鞘雇用を成功させるのに必要なのは、「私」の半径3メートル世界の他者と質の良い関係を具体的に動いてつくる他ありません。
●求められる「組織社会化」
それは組織内における自分の居場所を確立するために必要なプロセスである「組織社会化」を成功させることを意味しています。
組織社会化はよく新入社員の適応に対し用いられる理論ですが、転職や再雇用、元鞘雇用でも組織社会化の成功が大きな鍵を握っています。
新入社員の組織社会化の最大の課題が「役割の獲得」であるのに対し、熟練したキャリアでの再社会化は「良好な人間関係の構築」です。
「所詮、出戻り」と陰口を言われないように、一刻も早く自分の存在価値を知らしめたい気持ちは分かりますが、どんな能力があろうとも周囲といい関係がない限り、その能力が生かされることはありません。
一方、新規加入する“出戻り”を受け入れるメンバーたちは「自分たちを大切に扱ってくれるだろうか?」「自分たちにどんな利益をもたらすのだろうか?」「本当に信頼に値する人物なのだろうか?」と不安を感じているので、新参者の一挙手一投足に注目します。
そういった不安を消すには、「私」が動くしかありません。
つい、私たちは人から信頼されることばかりを考えてしまうけど、人は信頼されていると感じるからこそ、相手を信頼する。そして、その人の人間的魅力、価値観、誠実さや勇気、明るさや謙虚さ、やさしさなどを肌で感じると、「力になりたい」「一緒になにかやりたい」と心の距離感が縮まっていきます。
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