押し寄せる外国人観光客は、本当にカネを落としているのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月3日 8時0分
お金の使い方も変化した。コロナ前は中国人の爆買い頼みだったが、現在は宿泊費、娯楽などサービス費へと比重が移っている。中国以外の多様な国からの来日が増えてきたことで、インバウンド消費の対象がモノからサービスへ変化しているのだ(図表2)。とはいえ、全体の消費額が大きくなっていることから買い物需要も拡大していて、百貨店などは大きな恩恵を受けている。
●救世主的存在のインバンドだが……
図表3は百貨店販売額と百貨店免税売上の推移を示したものだ。売り上げが伸び悩む百貨店業界にとって、インバウンドは富裕層取引と並ぶ成長部門とされているが、その存在感が大きくなってきたことはデータでも明らかだ。コロナ前でも売り上げの5%超に達していたが、2023年にはその水準を回復。2024年上半期では10%超にまで拡大している。百貨店業界にとってインバウンドは、まさに救世主ともいうべき重要な位置付けとなったのである。
ただインバウンドの恩恵は大都市に偏っており、地方や郊外の店舗には及んでいない。日本百貨店協会が発表した2024年3~5月の百貨店免税売上は約1814億円だが、うち三越伊勢丹、高島屋、Jフロント、H2Oからなる大手百貨店の免税売上は合計が1416億円ほどで、約8割を占めている。他にも松屋銀座の免税売上が推定150億円以上あることを加味すれば、インバウンドの大半が大手百貨店の大都市基幹店にとっての限定的な追い風だということは留意すべきだろう。
●各国の通貨と国別消費額を比較してみた
それにしても、なぜ訪日客数や消費額がこれほど急速に拡大しているだろう。日本が観光地として海外から高い評価を得ていることは大前提としても、最大の要因が円安にあることは言うまでもない。
ご存じの通り、ドル円相場は一時1ドル=160円に達するほど円安が進んだが、振り返ればコロナ前の2019年11月末ごろは109.45円だったのである。単純計算で146%ドル高円安となっているということだ。国中がざっくりいつでも3割引きセール実施中の状態なのだから、行かない手ははない。ソニーフィナンシャルグループの調査「グローバル経済・金利ウォッチ」によれば、インバウンド消費急拡大の要因として、円安要素が50%以上を占めているとしている。
インバウンド消費動向調査における国別消費額の2019年比増減率と、各国通貨の対円増減率をプロットしたのが図表4である。完全な相関性とまではいかないが、対円で通貨が強くなっている国ほど消費額が増えている、という傾向は見て取れる。
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