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押し寄せる外国人観光客は、本当にカネを落としているのか

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月3日 8時0分

 こうしたデータを踏まえると、今のインバウンド需要の急拡大は円安要因に支えられている部分は大きく、為替の環境が変われば急激に落ち込む可能性は高いだろう。実際、円相場は日銀の金利政策転換を受けて、2024年8月22日時点で145円と反転している。円安水準は行き過ぎであるという意見も聞くが、今後は日米金利差の縮小なども考えれば、より円高に修正されていく可能性もあるだろう。

 8月の株式相場で過去最大の暴落が発生したのも、こうした為替への反応が敏感なマーケットにおいて、バーゲンセール状態だった日本株の割安感が失われるという要因も発端の1つだったという。円安が修正されることになれば、インバウンド消費においても、客数や消費単価は大幅に落ち込むことになるだろう。特にブランド品など高額品販売が中心の百貨店の売り上げは、かなり影響があるかもしれない。

●大手百貨店よりインバウンド需要を取り込んだ存在

 百貨店大手もこの点は十分に認識済みであり、各社ともインバウンドの取り込みは怠らないものの、「一過性のものとして、安定的な売り上げ、収益基盤の強化に努める」と述べている。富裕層とインバウンドへの依存を強め、大衆離れを止められてはいない百貨店にとって、インバウンド沈静化後に富裕層一本足で戦略が組めるかどうか、考えておく必要がある。

 さて、インバウンドの恩恵を受けている代表として百貨店を見てきたが、実は2023年度に、大手百貨店よりインバウンド需要を取り込んだ小売企業があることをご存じであろうか。ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナル(PPIH)だ。

 同社が先ごろ発表した2024年6月決算は、35期連続増収増益を達成、売り上げはセブン&アイ、イオン、ファストリ、ヤマダHDに次いで、5番目の2兆円越えを実現した。その中で、インバウンド売上が1175億円となり、百貨店を抑えて国内トップクラスとなったことも示された(図表5)。

 ドン・キホーテは、訪日客のデスティネーションの1つとなっており、その独特の空間を楽しむとともに、安価な土産品を買う場としても定着しつつあるという。百貨店のように高額品ばかりに依存せず、インバウンド客に広く侵透しているドンキは、円安一巡後でも大きな落ち込みとはならないであろう。さすが2兆円企業になるだけある、と感心するばかりだ。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。

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