経団連副会長に聞く日本企業の人材育成の課題 社員のリスキリングが伸び悩む背景は?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月23日 18時55分
国際戦略経営研究学会と早稲田大学イノベーション戦略研究部会が開催した「産学官に求められるリスキリング・人材育成のあり方」で登壇した小路氏
持続的な賃上げや労働移動の円滑化を実現するべく、政府が重要な施策の一つに位置付けているリスキリング。特に海外では人材教育の一環として、企業が社員を大学院などに送り込み、新たな専門知を修得させるといった施策も実施している。高度専門職人材が求められる現代の企業社会では特に必要な施策だ。
だが日本企業では、こうした動きはあまり進んでいない。新卒で入社した社員を社内で育成する考え方が根強く残っているためだ。一度社会に出た人材の大学院進学も肯定的に見る動きは限定的といえる。文部科学省のデータでも、大学院の社会人入学者数はここ20年ほど伸び悩み、その年間入学者数は1.7万人前後と横ばいだ。
この傾向は大学院進学が肯定的に評価されにくい文系だけで起こっているわけではない。分野によっては院への進学が当たり前である理系でも同様だ。一度社会に出てしまうと、学部卒の社員が、その企業で働きながら修士号を取得することは難しい。これは当人のキャリア選択の柔軟性を損ねていて、日本社会が抱える課題だといえる。
この問題について、国際戦略経営研究学会と早稲田大学イノベーション戦略研究部会は8月21日、シンポジウム「産学官に求められるリスキリング・人材育成のあり方」を早稲田大学国際会議場(井深大記念ホール)で開催した。基調講演では、経団連副会長で教育・大学改革推進委員会委員長を務める小路明善・アサヒグループホールディングス会長が講演した。
日本企業が抱える課題は何か。日本社会はどうなっていくべきなのか。小路氏がITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じた。
●日本企業の人材教育の課題は?
――日本企業の人材教育、特にリスキリングの課題について、小路会長はどうお考えですか。
リカレント・リスキリング教育は、企業の発展のためだけを目的にして考えてはいけないと思います。これからは個人が生涯学習をし、労働移動をして、自ら生涯プランを考えなければならない。そういう時代に入ってきたと思います。
そうすると、個人が自分の能力を磨き上げて、それを生かして仕事をしていく。個人が成長させた能力を、その会社だけでなく、転職先の企業でも生かせるようになることによって、社会全体への貢献にもつながります。企業はこうしたことまで視野に入れて、会社と個人それぞれの成長に向けたリスキリング、リカレント教育を考えるべきだと思います。
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