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生成AIは銀行員に代われるか? 顧客対応、コンプラチェック――進む金融業界の活用事例

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月30日 6時0分

 技術面では、Bedrockを通じてAnthropicのClaude 3.5を利用している。「複雑な保険文書の意味を正確に理解し、自然言語でアウトプットできる能力が決め手だった」と佐々木氏は言う。

 FINATEXT HD傘下のナウキャストが開発した「Finatext Advisory Assist」は、証券・保険領域の営業とコンプライアンス業務を生成AIで効率化するシステムだ。データ&AIソリューション事業責任者、片山燎平氏は、システムの特徴をこう説明する。

 「従来のコンプライアンスチェックは非常に非効率だった。1日に数十件、時には数百件の録音データが上がってきて、それをランダムサンプリングで聞き、チェックする。1時間の商談を1.5倍速で聞かなくてはならないような状況だ」

 これに対し、ナウキャストのシステムは二段階のアプローチを採用した。まず、企業が自社のコンプライアンス基準を入力すると、AIがチェック対象の会話を自動で分類。重要度に応じて色分けを行い、人間が優先的にチェックすべき箇所を明確にする。

 次の段階として、AIが会話の内容を理解し、重要な部分を抽出する。「例えば、家族構成や既存の保険の確認など、コンプライアンス上重要な項目について、AIが『この部分は聞いていない』『ここは話題に上がったが詳細は確認していない』といった具合に指摘する。これにより、人間の確認作業が格段に効率化される」(片山氏)

 技術面では、Amazon Bedrockを基盤に、OpenAIの音声認識エンジンであるWhisperを活用した。DBに登録した単語を追加学習させ、顧客専用の書き起こしモデルにチューニング、金融専門用語の認識精度向上に注力したという。「例えば『チューリッヒ』という保険会社名でも正確に認識できるよう、モデルが自動で学習していく」と片山氏は強調する。

●金融業界における生成AI活用 課題と展望

 金融分野での生成AI活用が進みつつあるが、金融業界ならではの難しさもある。金融機関では、各種金融規制法やガイドラインの順守が不可欠であり、生成AI特有のセキュリティやハルシネーション(幻覚)への対応に注意しなくてはいけないからだ。大手金融機関を中心とした金融データ活用推進協会は、金融業界向けに「生成AIガイドライン」を作成するなど、生成AI活用に関する指針をまとめている。

 一方で、過度にセンシティブになることは諸外国に比べ業務効率化が進まないというリスクもはらむ。ナウキャストの片山氏は、生成AIの位置付けを再考することの重要性を次のように説く。

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