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日立の金融事業、インドで無双 「DXの落とし穴」にハマりながらも成し遂げたトップシェア

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月1日 6時0分

 そこで同社が銀行に提案したのが、フルアウトソーシングによる成果報酬型のATM運用サービスだ。

 資産保有からATMの設置場所の選定まで担い、ATM取引数に応じた従量課金モデルで固定費を削減、銀行とのウィンウィンな関係を構築した。強みであるデータ活用によって採算性の高い設置場所を選定できるという提案が、銀行には響いた。

 「その結果、さまざまな銀行からの受託につながりました。現金入出金量といった各行のATMデータが集まったことで、利用頻度の高いエリアや現金切れが起きやすい場所などが分かってきたのです。そうすると、今度は銀行に『この場所のATMは実はあまり儲(もう)からないので廃止して、こっちにATMを増やしませんか?』といったコンサルティングにもつながっていきました」(松本氏)

 この動きはユーザーにとってもメリットになる。利便性が高い場所に、現金切れを起こさないATMが設置されていることで利用率が向上する。銀行もビジネスの商機を取りこぼさずに済む。現在、日立ペイメントサービスが運用・保守を担う銀行ATMはインドの業界平均よりも33.2%高い利用率を実現しているという。

 さらに、複数銀行の横断的な分析データは、自社ブランドATMの設置場所にも生かせる。人の往来が多く利用率が高いエリアに設置するのはもちろんだが、銀行が設置していないが現金需要が大きい郊外や農村地にも手を広げたのだ。これまで銀行のATMや支店がなく、金融サービスを利用するのが難しかった郊外在住者が、現金の入出金や振り込み、口座情報の確認などを容易にできるようになった。

 より郊外在住者が簡単に金融サービスにアクセスできるよう、日立ペイメントサービスは2024年1月に金融サービス仲介事業「日立マネースポット・プラス」を立ち上げた。小売店を銀行サービスのタッチポイントとすることで、距離などの問題からATMにアクセスできない人々への利用を促していく。

●遅咲きだったPOS事業 トップシェアまでの道

 冒頭に記したように、日立ペイメントサービスはPOS事業にも強みを持つ。運用するPOS台数は200万台超で、市場の4分の1を占める。

 今でこそ市場をけん引する存在となったが、POS事業に乗り出した2010年から約9年ほどはデジタル決済市場の追い風があったにもかかわらず、飛躍的な成長を遂げることは難しかったという。松本氏は「インドでのデジタル決済の普及率が上がっていくのに比べて、当社のビジネスが急角度で伸びたわけではなかった」と、当時を振り返る。

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