日立の金融事業、インドで無双 「DXの落とし穴」にハマりながらも成し遂げたトップシェア
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月1日 6時0分
「われわれのPOS決済事業を強化していくために、インドのパートナーと組んで加盟店開拓から一緒に進めていく必要性を感じました。そうしないと、デジタル決済市場の成長角度に足並みをそろえていくのは難しいだろうと」
そこで日立ペイメントサービスは2019年1月、インド最大の国営商業銀行であるインドステイト銀行(SBI)と合弁会社「SBIペイメントサービス」を設立。
SBIペイメントサービスが加盟店開拓を担い、日立ペイメントサービスはテクノロジーの側面から加盟店のデジタル化を支援し、業務効率化を実現することで加盟店増につなげるというのが事業戦略の大きな柱だった。
しかし同様の戦略を考えているのは、他社も同じだった。デジタル決済が急速に進む中で、加盟店向けのプラットフォーム競争が激化。加盟店の事業のデジタル化を推し進めようと奮闘していたが、なかなか思うように成果に結び付かない状況に陥った。
「加盟店からすると、部分部分でデジタル化されても大変なだけ。当時、チーム内で『アフターデジタル』という本を擦り切れるほど読み、よくよく考えまして、『加盟店が求めていることは何なのか』という視点が欠けていたことに気付きました」(松本氏)
デジタル化ばかりに目が向いてしまい、手段と目的がすり替わってしまっていたのだ。結果、システムのサイロ化やデータ分析の形骸化などが起こり、顧客の潜在的なニーズが置き去りにされていた。
そこで日立ペイメントサービスが生み出したのが、加盟店の店舗運営で必要になるサービスをリアル(現金)、デジタル問わず支援していくというソリューションだ。
「ATM事業でやったように『当社に全部任せてくれませんか?』と提案しました。特定のプロセスだけをデジタル化しても意味がなく、店舗運営における販売企画~顧客管理で必要なサービスをワンストップで提供することで店舗運営の支援につながると思いました」(松本氏)
提案を踏まえて、加盟店業務プロセスの全体像を見てみると、課題が見えてきた。レジの現金管理だ。在庫管理や発注・仕入れ、決済や顧客管理などはデジタルに置き換えられたが、現金残高をリアルタイムで把握できていない点が課題として浮かび上がった。
現金残高が把握できないと釣り銭切れが発生し、買い物客にお釣りを渡せない事態も起こる。さらに、現金を含む店舗売り上げの実態をタイムリーに把握できないため、銀行から与信を受けることも難しくなるという。
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