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みずほ、第一生命、りそな社長が鼎談 インパクト投資への「課題と葛藤」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月29日 19時50分

 国民の年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)では、公的年金の投資判断にあたって、もっぱら金銭的リターンの最大化を求められてきた。それ以外の「他の事を考慮」(他事考慮)することは禁じられていると解釈されてきた。従ってGPIFはこれまで、投資リターンを最大化する以外のことは考えてはならないとされ、社会課題の解決を目的とするインパクト投資を運用手段にすることはできなかった。

 しかし6月、岸田政権で「新しい資本主義」を打ち出した際に、政府見解が変わり、これまでの運用方針に変化が見られた。つまりGPIFがインパクト投資をしても「他事考慮」を禁止した基本方針に違反しないことになった、と解釈されたのだ。

●「定量的な検証が必要」

 これについて、生命保険というアセットのオーナーである第一生命の隅野社長は「GPIFがインパクト投資をしても、『他事考慮』を禁止した基本方針に違反しないことになったと解釈されたのは、大変喜ばしいことです。ただ現実は、まだ理想とするところまではたどりつけていない」との現状認識を述べた。

 「最終的な利益をいかにリターンとして返すかは、最優先事項という共通認識はありますが、そのウェイトの置き方がナイーブで難しいテーマだと思っています。第一生命は責任投資に関する基本方針を掲げ、ここでは中長期的な投資収益の確保と、社会の持続的可能性を両立させる、つまり『二兎を追う』と宣言しています。この主従の関係、または両立なのかにかかわらず、投資リターンを必ず追求する点に関して、投資行動に大きな違いは表れないと現時点では考えています。逆にインパクト投資が中長期投資よりも上位概念といえるかどうかは、なかなか悩ましい問題です」

 その上で「インパクト投資は絶対に必要だとは思いますが、(その効果について)第三者機関による客観的な目線で定量的に検証し続けることが必要だと思っています。企業と投資家がエンゲージメントを深めていけば、それ自体が最終的なリターンにつながっていく。皆が共通の評価軸を持つようになれば、株式、債券市場も個別銘柄の選定や売買に反映するようになると思います」と検証の必要性を訴えた。

 以上が鼎談の内容だ。インパクト投融資、サステナブル融資といった環境などの社会課題を解決するための投融資は、急速に伸びている。背景にあるのは、金融機関が利益だけを追求していては投資家やアナリストから十分な評価を得られなくなり、株価にも影響が出ている事実だ。

 金融機関は、業績以外の社会的価値を実現するための投融資に参画することによって、新たな次元での評価を得られるとみている。一方、民間資金がこうした社会課題の解決に使われることは、財政事情の厳しい国や地方自治体にとっても事業支出の節約にもなる。長期的には、財政支出の削減にも役立つことになりそうだ。

(中西享、アイティメディア今野大一)

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