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TXTが眼前で踊る! 世界的先駆者に聞く「映画館VRコンサート」の破壊力

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月25日 11時10分

 VRだからこそできることを演出のキム監督に聞くと「ゴーグルを通して本当に間近でアーティストが見られます。CGも合成をしている分、アーティストが伝えたいことやコンセプト、曲のストーリーテリングもCGを通して具現化できるのは強みになっています」と話す。

 大規模なコンサート会場で、座席が後方の場合、アーティストが遠く見えてしまう。その結果、大きくアーティストが映し出されるスクリーンを見るのが常だ。VRも画面によってアーティストを見ることになるので、機械を介する点で共通している。

 「大型スクリーンでは、カメラが映し出す1つの角度によって観客はそれを見るだけです。一方VRには、その制約がありません。自由度の高さは差別化のポイントです」(キム監督)

 VRでは自分の目をどこに合わせるかによって、見たいアーティストやメンバーに焦点化できる。この特性はファンに特別な体験を提供することになるだろう。

 制作現場でのAIの活用法については「人が実行してきたことをAIが代替し始めています。カメラでの事例で言えば、グリーンバックで全体の画を撮れれば、AIはバックダンサーを含め、各メンバー1人ひとりを切り抜き、背景と分離できます」と話す。もしAIを活用せずに人が直接作業するとなると、楽曲1曲あたり1000万円以上の費用がかかるそうだ。

 「分離以外でも、画像にある細かなノイズも除去してくれますし、レンダリングの速度も速くなりました。これからはAIの活用範囲も広げていくつもりです」

 AIにより制作も楽になったかを聞くと「期間が短縮されて楽になった部分があるんですが、だからといって、他の人たちが容易にこなせる技術ではなありません」と胸を張る。キム監督によると、曲自体を全てワンテイクで撮影して、一気に編集をするそうだ。だが1曲あたりのフレーム数は、約1万フレームにも達するという。

 「もし、今後VRコンサートの全体の長さを1時間40分で開催すると仮定するならば、約16万フレームあることになります。そうなるとAIを駆使しても、編集の難易度がとても上がり、乗り超えなければならないハードルが増えるのです。高度な技術を持つ当社だからこそできるのであって、他社が簡単にできるわけではありません」

●Apple、Meta、サムスン、Googleと密接に議論

 テック企業のビジネスモデルの根幹は、データ活用の有無にある。VRコンサートで言えば、例えば「筆者の推しはメンバーのAだけど、VRコンサートでは意外にメンバーBを目で追っていた」「この曲のサビの部分で大きく手を動かした」など具体的なデータを取得できる強みが想定される。

 イCEOはデータ活用について「現時点では、集まったデータについての具体的な活用計画はありません」と話す。その一方で「当社は10年目を迎えました。これだけVRに特化し、継続してきた企業はほとんど存在しないこともあり、Apple、Meta、サムスン、Googleなどの大手とさまざまな事業について密接に議論を交わしています」と自負する。つまり、イCEOが期待するVRコンサートを一般化したいのであれば、さらなる技術の研さんと、データ活用をうまく組み合せることがカギとなる。それが実現できれば、大衆化への時間が短縮される可能性は高い。

(武田信晃、アイティメディア今野大一)

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