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「若者のディズニー離れは“料金が高い”から」説は、本当か

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月18日 7時40分

 仮に低所得の若者や貧しい家庭の子どもが気軽に行けるように、ディズニーの入園料を大幅に下げて5000円くらいにしたと想像していただきたい。園内のグッズや食事もファストフード並みの価格で提供したとしよう。当たり前だが売り上げは大きく落ちるだろう。

 しかし、ディズニーを愛している人々は値段は下げてもアトラクションやパレードのクオリティーが下がることは許せないはずだ。園内のサービスやキャストの「おもてなし」の高さも求めてくる。ここはキープしなくてはいけない。

 もちろん、安全面も手抜きはできない。毎日、たくさんの人が乗るものなので整備や点検の人員を減らすことも難しいだろう。

●チケット安売りの見返り

 テーマパークを運営するためのコストはもちろん、リピーターのためにも常に新しい魅力を開発しなくてはいけないので設備投資も必要だ。

 では、「安いチケット」でそのカネをどう捻出するのか。人口が右肩上がりで増えていた時代は、日本名物の「薄利多売」で乗り切れた。園内を通勤ラッシュのように混雑させる代わりに、安く高品質なエンタメを提供できた。

 しかし、今は無理だ。先ほどの人口ピラミットを見ても分かるように、ここから若者と子どもが加速度的に減っていく。となると、チケット安売りであの巨大パークを運営する方法は一つしかない。「ブラック労働」だ。

 時給は最低賃金ギリギリに抑えて、これまで3人でやっていた仕事を1人でやらせる。「お客さまのため」とかなんとかうまく丸め込んで、できるだけタイムカードを打たない「サービス残業」を増やす。

 「誰もが楽しめる安くて安全で高品質なディズニー」を実現するには人身御供(ひとみごくう:人間を神への生贄とすること)ではないが、必ず犠牲になる人々がいる。

 これが日本人を貧しくさせた「元凶」だ。

 低賃金労働者が「われわれのような貧しい者でも買えるようにしろ」と企業に「安さ」を過剰に求めることによって、新たな低賃金労働者が生み出される。この貧しい者同士の足の引っ張り合いを30年以上続けてきた結果が今の「安いニッポン」なのだ。

 分かりやすく言えば、日本人は「もっと安く! もっとお得に!」と叫びながら「みんな等しく貧しくなる」という道を選んだのだ。

●給与UPより「値下げ」を求める人々

 商品やサービスの価格を「値上げ」すると、われわれは何かとつけて「高級化だ」「庶民切り捨てだ」と文句を言って、とにかく値下げさせようとする。

 しかし、よその国の人々は違う。「なぜこんなに世の中が値上げしているのに、われわれの給料が上がらないのだ」と文句を言うのが普通だ。

 もし本当に若者が高いチケットで「離れた」というのなら、ディズニーに文句を言うのではなく、そもそもなぜ日本の若者は、世界的にも異常な低賃金なのかと文句を言うべきだ。もちろん、自分の給料を上げていくための努力も惜しまない。交渉もするし、転職もする。

 「高い」ものがほしいのなら、自分の生活水準に引きずり下ろすのではなく、自分たちの価値を高めていく。そういう発想が当たり前にならない限り、いつまでも日本経済が上向くことはないのではないか。

(窪田順生)

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