動物の「うんち」で発電できるのか? 愛媛県の失敗と学び
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月15日 7時5分
動物の糞尿で電気を作り出すことはできるのか? ※画像は愛媛県立とべ動物園の動物ではありません(画像:ゲッティイメージズより)
2019年、愛媛県内の動物園で実現すれば国内初となるチャレンジが行われていた。
動物の糞尿などを活用したバイオガス発電・熱利用設備を「愛媛県立とべ動物園」に導入するというプロジェクトだ。
とべ動物園は県有施設の中でも温室効果ガスの年間排出量がトップ10に入るため、園内でバイオガス発電をしたり、その熱利用をしたりできれば、効果的に排出量の削減ができる。また、環境に優しい動物園としてアピールできるだけでなく、来園者に対して再生可能エネルギーの普及を啓蒙できる。
2018年11~12月にとべ動物園の動物から採取した糞尿を調べたところ、バイオガスプラントを導入し、継続的に運用できる可能性が見えた。動物園内で排出される糞尿の量が1日当たり2トンほどなので、10キロワットの発電機であれば27時間の運転分に相当するガス発生量が見込めるとの結果が出たのだ。
実現すれば、動物園では全国初の取り組みとなるだけでなく、世界でも数例であることから、先進的な取り組みとして愛媛県をアピールできる。国の補助金を活用し、2019~2020年度にかけて調査を実施。実験室で、糞尿量に対する発電量と、バイオガスプラントの初期投資やランニングコストを調査した。
惜しくも、採算の関係で園内での実用化には至らず、プロジェクトは調査段階で幕を閉じることになった。調査の中でどのような課題に衝突し解決したのか、実用化に向けて足りない視点は何だったのか。
愛媛県 環境局 環境・ゼロカーボン推進課の担当者への取材と専門家への取材を通して、動物園におけるバイオガス発電の実用化の可能性を探った。
●次々見つかる問題 失敗プロジェクトから「何を」学ぶ?
2018年の調査ではバイオガスプラントの導入の可能性が見えたが、今回の調査ではさっそく問題が見つかった。
とべ動物園では、自然環境に近い形態で動物を展示していたため、回収した糞尿に多くの砂や濡れた長尺のわらが混じっていた。バイオガス発電の原料となる糞尿にそれらが混じることで、プラント内の循環ポンプの閉塞を引き起こし発酵を阻害してしまったのだ。
わらの含有量が比較的少ないゾウとカバの糞尿のみに原料を限定したところ、設備のランニングコストが増大することはないが、糞尿の分別作業に想定以上の人的コストがかかることが分かった。結果、原料として扱う糞尿を限定せず、全ての動物の糞尿を活用する道を探ることになった。
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