動物の「うんち」で発電できるのか? 愛媛県の失敗と学び
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月15日 7時5分
調査2年目、技術的な問題はおおむね解消できたが、設置20年間の稼働を想定した維持管理費を考慮すると、「ランニングコストが増大し、赤字になる」という結論が出た。設備の初期投資の概算は3億6000万円程度。その部分については、国の補助金で全額賄(まかな)える予定だった。
当初は、発電による電気料金の削減がランニングコストを上回ると見込んでいた。しかし、設備の大型化や海外製の粉砕機をはじめとする新たな機器導入のほか、原料に砂が多く含まれることで設備が砂との摩擦で劣化し、部品交換を含む維持管理経費が高額となり、支出超過になることが分かった。
「今回は国の補助金の活用を見込んでいたため、発電した全電力を園内で消費する必要がありました。バイオガス発電のFIT(固定価格買取制度)売電の買い取り価格は約40円と高めに設定されているため、もし売電が可能であれば、ランニングコストを下げられたかもしれません」(愛媛県 環境局 環境・ゼロカーボン推進課 担当者)
仮に園内でのバイオガス発電が実現したら、どれくらいの電力量を生み出せるのか。園内の糞尿などを全て使用した場合に想定される発電電力量は年間125メガワットアワーであり、このうち導入設備に消費される電力は年間55メガワットアワーであるため、70メガワットアワーの利用が可能だったという。
動物園での年間消費電力は2022年度の実績で1721メガワットアワーであるため、全体の消費量に占める割合としては3%程度となる計算だ。実際の導入時には園内の電源として使用するほか、発電に伴う発熱を回収し、発酵槽の保温に活用したり、40度の温水として利用したりする予定だった。
園内での実用化は叶わなかったが、今回の挑戦から得た学びを愛媛県の担当者は以下のように振り返った。
「とべ動物園では、糞尿やわらなどの廃棄物を全量堆肥化して園内へ配布するだけでなく、園内に汚水処理設備を有していることから、一般の畜産事業などで課題となる糞尿などの運搬・処理や臭気対策にかかる費用があまり発生していませんでした。糞尿や食品残差などの処理に多額のコストをかけている畜産業やレストランなどの事業者は、バイオガス発電によるコスト削減が見込めるのではないかと思います。われわれの取り組みの結果を参考として提供するなどして導入を広く働きかけていきたいです」
●専門家に聞く、バイオガス発電の可能性
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