動物の「うんち」で発電できるのか? 愛媛県の失敗と学び
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月15日 7時5分
環境化学工学や環境科学などを専門とする、豊橋技術科学大学の大門裕之教授は動物園でのバイオガス発電について「目的を明確にすることが重要」と話す。
「バイオガス発電の原料を園内調達に限定した場合、園内の電力全てをバイオマス発電で賄(まかなう)うのは難しく、非常用電源の位置付けです。しかし、環境教育の一環という目的であれば、非常に良いアピールになります」
大門氏は、バイオガスプラントを設置することの副次的な効果として「バイオガスプラントの横にグリーンハウスなどを設ければ、発電時の排熱を利用して、トマトや南国フルーツを育てることも可能です。動物の糞尿で生み出された電気や熱で植物や農作物が育つという流れは、動物園での環境教育として有効的です」とコメントしている。
愛媛県の担当者は、今後再度とべ動物園でのバイオマス発電にチャレンジするためには「採算性の確保が焦点となります。維持管理費用の削減が難しい場合は、発電量の増加による収入増を図るのも課題解決の一つの方法です。今後、効率的なメタンガスの発生技術などの新技術開発に期待しています」と話していた。
大門氏はこの点について「ここ数年でメタン発酵の注目度は上がっている」と話す。「2019年あたりから経済性を重視した小規模のバイオマス発電システムが出始めました。ここ5年で広がってきており、並行して発酵効率の改善や向上が期待できる新しい技術も開発されています。動物園での取り組みは早かったのかと思います。今もう一度見直したら違う結果が生まれるかもしれません」とバイオガス発電の可能性を示した。
新しい取り組みに失敗は付き物だが、その学びをどう次のチャレンジに生かしていくかが重要だ。
現在、愛媛県では動物園を含む周辺施設で2030年度までにゼロカーボンの達成を目指す「とべもり+ゼロカーボン夢プロジェクト」に取り組んでおり、再生可能エネルギーの導入を進めているという。
その中の取り組みの一つとして、廃食用油を原料とするバイオディーゼル燃料を使用したバイオマス発電設備の導入を計画しており、現在、調査を行っている。失敗が生んだ学びが新芽を育て、結果という果実を実らせると期待したい。
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