ビールの成功体験よもう一度 サントリーがワインに注力、赤字だが勝算は
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月30日 16時5分
1936年には「日本のワインの父」と呼ばれた川上善兵衛氏と協力して、山梨県・登美の丘(現「サントリー登美の丘ワイナリー」)でぶどう園の経営を開始。ぶどうの栽培とともに、醸造から熟成までをワンストップで手掛ける体制を整えた。
1952年に農業者以外の農地取得を制限する農地法が制定され、ワイナリーが農地を持つことが難しくなったものの、サントリーは制定以前に登美の丘の農地を取得していたため、影響はなかったという。一種の先行者利益を生かし、1975年には同社によると日本初となる「貴腐ぶどう」の収穫に成功するなど、ぶどうの栽培とともにワイン醸造も進め、日本ワインの生産者としての立ち位置を確立していった。
その後、構造改革特区をきっかけに農地法の規制が緩和し、ワイナリー自らが農地を持てるようになり、日本ワインの勢いが徐々に伸びてきた。サントリーの調べでは2024年に稼働している国内ワイナリーは約500軒、2015年比で約2倍である。
その勢いを反映するように、日本ワイナリー協会などが2003年から開催している「日本ワインコンクール」では、出品があったワイナリー軒数、点数が2024年は過去最多を記録。国際的なコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」でも、金賞以上を受賞した日本ワイン品数が2015~19年は13点だったところ、2020~24年は20点に増えており、活況を呈している。
●糖度が上がりにくいぶどう「甲州」に注力するワケ
こうした中、日本ワインの製造元として長い歴史を持つサントリーでは近年、どんな取り組みをしているのか。サントリーワイン本部の担当者は「『ものづくり』と『ワイナリー』の両面から、品質向上に向けた取り組みを行っている」と話す。
近年の代表的な取り組みといえば、2022年9月の「FROM FARM」をコンセプトにした新ブランドを立ち上げたことだ。具体的には、フラッグシップの「シンボルシリーズ」、社内ワイナリーの魅力を強調した「ワイナリーシリーズ」、ワイン産地ごとの個性を伝える「テロワールシリーズ」、そして日本に固有の品種を手軽に味わえる「品種シリーズ」の4つを展開し始めた。
フラッグシップとなるワインを中心に、日本に固有の品種「甲州」の自社栽培に取り組んでいるのも特徴だ。2009年から「登美の丘 甲州」を販売するなど、以前から甲州を自社で栽培していたが、2014年ごろからより品質の高い甲州を生み出す取り組みへ本格的に着手。ワインとして結果が出るまでは10~15年と長い期間を要するという非常に長期的な取り組みだ。
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