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古舘伊知郎の「プレゼンの極意」 修羅場を乗り越える「準備」と「捨てる覚悟」とは?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月14日 14時34分

 スポーツ中継において、実況は、今起きている事象に合わせて言葉で状況を表現していく。この接触事故のケースでは、実況の古舘が「接触」について先に実況し、その接触の原因について実況が解説者に聞くのが通常の対応だ。しかし、レースの重要なポイントとなった接触について、解説者が古舘より先に言葉を発し、実況が後追いをしてしまった。つまり古館は、実況の役割を果たせていなかったのだ。

 古舘はなぜ失敗したのかを振り返る。「(準備不足とはいえ)一応、準備したものを全部言おうとしていたのです。フジテレビに抗議電話が殺到して、本当に反省しました」

 本書には、古舘がF1実況を準備する際に作成した資料が掲載されている。例えば、モナコGPのコース図を手書きし、その周りにコース概要についての情報を書き込んだ。別紙には、各ドライバーとチームについて取材した話や、考案したフレーズがびっしりと書かれている。

 「準備は面倒でつらいです。モナコGPのときだって(余暇で)カジノに行ってみたいと思うし、スタッフは飲み会に行っても、自分は1人、部屋で準備をしているのです。でも、やめたい思いがピークまで来ると、人間の脳や心に必ずリバウンドがきます。すると、いやだな、苦しいなという思いが快感になって、つらいことが楽しくなってくるのです」

 古舘が本当に自分を追い込み、仕事に真剣に向き合って準備したからこその話だ。

●本番前に「準備したことを捨てる」 「最悪の本番」を想定せよ

 古舘は、これだけ緻密な準備をしながらも、最後はその準備をいったん捨てることが重要だと説く。

 「徹底的に準備はするのですが、本番の数分前には、その準備したことを捨てます。なぜか? 例えば、トーキングブルースの本番が始まった後、お客さんのウケ1つで話の間やタイミングが変わったり、携帯電話が鳴ったりして、準備した通りにやれることはあり得ないからです。ただ、準備をして頭の中に一度入れたのだから、捨てたとしてもかなりのことが残っているはずです。全部捨て、会場を見て、その場の空気感でやろうと思うと、荷が降りた感じがします。そして、気持ちを楽にして舞台ができるんです」

 準備の中で「最悪の本番」を想定しておくことも大事だそうだ。それはテレビ朝日「報道ステーション」の初代メインキャスターを務めているとき、休止中だったトーキングブルースの公演を1日だけ開催した際に感じたのだという。

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