サイゼリヤの進化か、改悪か? メニュー削減と2000店舗拡大の裏にある戦略
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月9日 5時15分
少なくとも日本全国のサイゼリヤンの中で「メニューの少ない小型店に行きたいなあ」とか「早く全国2000店舗を達成してほしいなあ」なんてことを望んでいる人は、ほとんど存在しないのではないか。
しかも、「2000店舗」というのもかなり身の丈に合っていない目標だ。国内事業は回復をしてきているものの「絶好調」というほどではなく、店舗数もじわじわと減少している。
●成長する中国市場との違い
例えば、2021年第1四半期に1097店舗だったものが、2022年同期には1087店舗、2023年同期には1071店舗と減少して、ついに2024年同期には1051まで減っているのだ。
このように苦戦する国内事業と対照的なのが、中国市場だ。中国のサイゼリヤももちろん「安くてうまい」を武器に成長しているのだが、日本のサイゼリヤと決定的に違うのは「値上げ」をすることだ。
「サイゼリヤは、アジアでは機動的な価格政策を実施している。上海や香港にある各地の法人が、それぞれの地域の経済状況などから価格を決定し、柔軟に値上げを行っている。
サイゼリヤの松谷秀治社長は、『例えば、中国では賃金の上昇が続いている。サイゼリヤは値上げを行っても、「リーズナブルなイタリアン」として認識されていることもあり、客数も伸びている』と話す」(東洋経済オンライン 2023年10月21日)
しかし、日本のサイゼリヤは「柔軟な値上げ」をかたくなに拒んでいる。できないのだという人がいるが、外食チェーン各社は普通に値上げをしている。かつて値上げをするとネットやSNSで「庶民切り捨てだ!」「もう行きません」と不買が呼びかけられたマクドナルドはこの2年で5度の値上げをしているが、業績は好調だ。
こういう他社事例が山ほどある中で、サイゼリヤが値上げに踏み切れないのは「自縄自縛のわな」に陥っている可能性が強い。「安さが強み」だと自分たちでも言ってきた。客にアンケートを取れば「安いから来た」という声が多い。そういうことを繰り返しているうちに「安さ」の奴隷になって、ここを失うことは全てを失ってしまう、という強迫観念にとらわれてしまっているのだ。
●「中国依存」によるリスク
正直これは「ゆがんだ経営」と言わざるを得ない。値上げをしながらも好調に売り上げを伸ばす中国市場の稼ぎによって、値上げをしないことで低成長を続ける国内事業を下支えして、なおかつ店舗数拡大まで目指すというのは「健全」とは言い難いポートフォリオだ。
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