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サイゼリヤの進化か、改悪か? メニュー削減と2000店舗拡大の裏にある戦略

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月9日 5時15分

 このような「中国依存」が大きな企業リスクになることは言うまでもない。過去に何度かあったが、かの国では反日感情が高まると、日系企業の製品やサービスは不買運動の対象となり最悪、撤退もあり得る。また、中国は消費者運動が日本と比べものにならないほど「炎上」するので、ちょっとした不祥事が命取りだ。

 分かりやすい例が、熊本の「味千ラーメン」である。同店は中国全土に500以上の店を構えるほど人気店だが、かつて店でとんこつスープを調理していないことが判明する「豚骨スープゲート事件(骨湯門事件)」という大騒動が起きて、ブランドに大きな傷が付き実害も出た。

 サイゼリヤの中国店舗も絶好調だが、これから先何が起きるか分からない。中国事業に大きな損失が出たとき、今の国内事業でそれをカバーできるのか。

 このような事業環境を踏まえるとやはり「2000店舗」は現実的ではない。というよりも、ここが全ての問題のような気もする。

●「物価高でも値上げをしない」は美談ではない

 現在、訪日外国人観光客がたくさん押し寄せて大人気となっている某外食チェーンの社長にインタビューをして、これから店を増やすかと質問をしたら「もう増やさない」と言っていて、現に今もそうしている。

 外食が店を増やそうとすると、そのタイミングで必ず「効率化」を進めなくてはいけない。マクドナルドのように高度にシステム化されたチェーンは効率化と相性が良いが、食事の種類やスタイルによっては、効率化を進めた途端に魅力が失われて、ファンの求心力も低下してしまうことがあるという。某外食チェーンの社長は「自分の店はそっちなので、拡大路線には走らない」と断言していた。

 個人的にはサイゼリヤもそっちではないかと思っている。安くておいしいものが食べられるという食のエンタメを体験できるこの店で、メニューを減らすとか店を小さくするのは、あまりいい結果を招かないような予感がするのだ。

 「物価高でも企業努力で値上げをしない」と聞くと、われわれは脊髄反射で「美談」として受け取るのだが、冷静に考えるとそんなわけがない。

 物価高は従業員にも影響があるのだから、まずは彼らの賃金を上げないといけない。会社として当たり前のことをやったうえで、原料高騰などの中で価格を維持するには何かを犠牲にしなくてはいけないということだ。

 「効率化」とか「コスト削減」というふわっとした言葉でごまかしているが、それは「これまでやっていたことをやめる」ということに他ならない。企業側にも客側にもなんの意味もない無駄なことならばどんどんやめればいいが、現実はそんなことはない。客側は「安さ」と引き換えに、これまで得られていた何かを失っているのだ。

●サイゼリヤは恐れずに「値上げ」をすべき

 それが今回の場合、「メニュー」だったというわけだ。われわれは「安さ」を享受する代わりに、「好きな食事を食べる」「いろんな食事を選ぶ」という楽しみを失っているのだ。

 サイゼリヤが50円、100円値上げをしても、本当にサイゼリヤが好きな人は応援を続ける。経営陣の皆さんは、中国や他のアジアと同様に値上げを恐れずに断行していただきたい。

 そして、ゆったりとした店内で、これまで以上に充実したメニューを安価に提供する。そちらのほうがよほど顧客満足につながるはずだ。

 「値上げをしない」をチヤホヤするのは、もうそろそろやめにしないか。

(窪田順生)

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