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なぜ、謎の「クラフト〇〇」が増えているのか 大企業が次々に参入する理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月16日 10時29分

 よく言われるように、日本の養殖技術は非常に高い。近畿大学がクロマグロの完全養殖に成功して世界で注目を集めたように、いずれ来る世界的なタンパク質不足の解決策の一つになるとも期待されている。そんな職人的技術を「クラフト」と銘打つのは、当然と言えば当然かもしれない。

 また、あまり「職人のこだわり」というイメージが直結しない「牛乳」の世界にも「クラフトミルク」という言葉が登場している。それが2024年6月、東京・吉祥寺に誕生した乳業メーカー「武蔵野デーリー」である。

 100年続く牛乳屋が立ち上げたメーカーで、「フリーバーン」(牛が自由に歩き回ることができる牛舎)など、牛をのびのび放し飼いにするなど、こだわりの飼育をしている牧場の生乳だけを用いた牛乳、つまりは「クラフトミルク」を製造販売するという。

 このようにありとあらゆる食品、そして原料にまで「クラフト」をうたい始めている現状に対して「どうせ一過性のブームでしょ」と冷ややかに見る人もいらっしゃるかもしれない。

 ただ、筆者は意外とこの流れは、分野によっては定着していつの間にやら「定番」になり変わっている可能性も大いにあると思っている。

●クラフトが「定番」になりそうなワケ

 「そば」の前例があるからだ。

 「手打ちそばの名店」でそばに歯応えがあったり、のどごしのよさをうりにしているところがある。あれも考えてみれば各店の職人の腕に左右される「クラフトそば」である。

 だが、実はこれは「傍流」だった。明治時代に発明された製麺機が普及し、昭和に入り、戦後もそのまま「機械打ちそば」が主流だった。それが1960年代後半から田舎の農家で使っていた古道具や農具が、東京の百貨店で高値で売られるような「民芸品ブーム」が過熱して、その流れで1970年代から「手打ちそばブーム」が起きる。そのようなニーズに対応する形で「そば打ち職人」が急に増えたというわけだ。

 手打ちそばの名店として知られる「藪蕎麦 宮本」(静岡県島田市)の主人、宮本晨一郎さんも当時をこのように振り返っている。

「宮本さんが修業していた1970年代は機械打ち蕎麦の全盛期。修業先の『池の端藪蕎麦』もご多分に漏れず機械で蕎麦を仕立てていた。手打ちの技術で唯一の指針となったのは、同じ上野にある『蓮玉庵』の店主が修業先に来て実演してくれた蕎麦打ちだ。そのとき目にした工程を脳裏に焼きつけ、あとは自分なりに工夫をし、独学で精度を高めてきた」(dancyu 2023年6月24日)

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