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地方中小で“進まぬDX”──伴走する地銀に立ちはだかる「4つの壁」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月16日 8時0分

 「若い世代の柔軟な発想が、従来の銀行の枠を超えた支援を可能にしている」と本城氏は手応えを語る。4月から本格的にICTコンサルタント業務を開始し、半年で約100件の相談に対応している。

 十六フィナンシャルグループでは、銀行本体ではなく子会社の十六電算デジタルサービスを通じてDX支援を行っている。DX事業部長の岩田規明夫氏は「子会社として取り組むことで、意思決定のスピードが圧倒的に速い」と、機動的な支援体制の利点を強調する。

 しかし、これらの取り組みは、決して平坦な道のりではない。各行が直面する課題や難しさは多岐にわたる。

 最大の壁は、DX支援を担う人材の確保と育成だ。経済産業省の河崎室長が指摘するように、専門性の高い人材の育成には時間がかかる。従来の融資業務とは異なるスキルセットが求められるため、即戦力の確保は容易ではない。

 組織全体のDXへの理解度も課題だ。岩手銀行の本城氏は「組織として、DXを進めていこうといった空気になかなかなっていない」と率直に語る。多くの地域金融機関では、まだ一部の担当者がDXの必要性を訴えている段階にとどまっている。

 さらに、顧客である中小企業側の理解不足も大きな障壁だ。経済産業省の調査によると、中堅中小企業の経営者のうちDXを「理解している」または「ある程度理解している」と回答した割合は半数にとどまる。DXに期待する効果も「業務の効率化・コスト削減」が中心で、本来のDXの目的である「新製品・サービスの創出」を挙げた企業は少数派だ。

 この状況について、河崎室長は「企業が求めるDX支援サービスと、実際に受けているサービスの間にギャップがある」と指摘する。つまり、中小企業のDXニーズに対して、金融機関が提供できているサービスが十分に追い付いていないのが現状だ。

 収益化の難しさも見過ごせない。DX支援は短期での収益化が難しく、経営陣の理解を得るのに苦心している金融機関も少なくない。

 これらの課題は、地域金融機関がDX支援の「夢」を実現する上で、避けて通れない現実だ。理想と現実のギャップを埋めるには、戦略的なアプローチと粘り強い取り組みが求められる。

●今後求められる展開は

 地域金融機関によるDX支援の未来は、人材育成とエコシステム構築にかかっているといえそうだ。

 まず、DIGITALCAMPのような専門機関との連携による人材育成の強化が急務だ。従来の銀行業務とは異なるスキルセットが求められるDX支援において、専門的な研修プログラムの重要性は高まるばかりだ。経産省の河崎室長は、ITコーディネーター資格の下位資格として、2025年からスタートするITCアソシエイトに期待する。取得費用が低く、維持費用も無料というこの新資格によって、DX人材の裾野を大きく広げたいという考えだ。

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