「おにぎり屋は少額で簡単に始められる」は甘い 行列のできる老舗「ぼんご」代表が語った“素手”の哲学
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月24日 12時16分
ぼんごの代表、右近由美子氏はおにぎりを通じて「食の心」を世界に広げる「たんぽぽプロジェクト」を提唱している。そのビジョンの通り、現在はたんぽぽの綿毛のように、多くのぼんごで修業した人が各地で独立して、おにぎりの魅力を伝えている。近年は海外にまで伝道され、ドイツ、ポーランド、カナダ、オーストラリア、さらにはアフリカのタンザニアで、おにぎりを広めようと奮闘する人がいる。
最近では希望者が多すぎて、最低でも1年以上待ってもらっている状況にあるとか。どのくらい修業すれば免許皆伝という決まりはないが「少なくとも1カ月は必要」と右近氏は話す。2~3年はみっちりと修業する人が多いようで、長い人は20年ほど働いているという。休業日の月曜には、従業員を対象におにぎり教室を開いて、つくり方を教えている。ぼんごの具材は57種類もある。握るだけでなく、具材の仕込みも、ともなれば簡単でないだろう。
●ぼんご代表が語った「おにぎりビジネス」の厳しさ
おにぎりブームについてどう思っているのか。右近氏に聞くと「私が『おにぎり店の主人と結婚した』と新潟の両親に話すと、最初は信じなかった。昔はおにぎりといえば、家でお母さんが握るもので、おにぎり店という商売があるとは、新潟の人は皆、夢にも思わなかったようだ」と振り返り、次のように続ける。
「ある経営コンサルタントが、テレビで『おにぎり店は少額で簡単に始められるから増えている』と話していて、びっくりした。店舗を借りて改装し、厨房機器をそろえ、人を雇い、お米や海苔やいろんな具材を仕入れないとできないのが、おにぎり店。100万円やそこらで始められると思うなら、甘い」
ぼんごのおにぎりはまず型に入れてつくっていくが、最後には素手で軽く握って仕上げる。そのとき、ビニールの手袋をしていると、米と具材の状態が手に伝わらないという。素手で握ったおにぎりを食べてもらえるのは、信頼の証。赤の他人が素手で握ったおにぎりを食べてもらえるのは、顧客との信頼が結ばれているからこそ。ブームに乗ってもうけたいだけの店は簡単に潰れるだろう。
●チェーン化も進む、おにぎりビジネス
右近氏は、ぼんごの卒業生に対して、地道に修行や経験を重ねて、店と顧客との信頼を結んでいってほしいとも話す。その意味では、地道に長く続けている、親類が営む板橋「ぼんご」と、一度失敗したが不屈の想いで再起した亀戸「豆蔵」の姿勢は、「おにぎりの心を伝えてくれている」と、右近氏は語った。
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