なぜ、松のやは「290円朝食」にこだわる? ターゲティングとポジショニング戦略から見えた“必然”
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月26日 5時10分
2. 製造(調理)
調理プロセスの標準化と効率化:メニューを絞り込むことで、調理手順を標準化し、スタッフのトレーニングコストや調理時間を削減している。
3. 流通
自社物流システムの最適化:効率的な物流網を構築し、店舗への迅速かつ低コストな食材供給を実現している。
4. マーケティングと販売
低コストプロモーション戦略:高額な広告費をかけずに、SNSや口コミを活用して認知度を高めている。
5. サービス
セルフサービスの導入とオペレーション効率化:必要最低限のサービスに絞り込み、人件費を削減している。
これらのバリューチェーン上の効率化により、松のやは競合他社が模倣しにくい低価格設定を可能にしていると考えられる。
●競合各社が同価格帯を実現できない理由
しかし、競合各社も顧客の囲い込みとLTV向上を図るという戦略は実現したいはずだ。それができない事情を考えてみよう。
食材コストの違い
牛丼チェーンは主力商品である牛肉を使用しており、牛肉は豚肉に比べて原材料費が高い。国際的な価格変動の影響も受けやすく、コストコントロールが難しい。
メニュー構成の違い
競合他社は多様なメニューを展開しているが、牛丼に乗せるトッピングやサイドメニューの種類が多い。これにより、調理工程や在庫管理が複雑化し、人件費や時間コストが増加する可能性がある。
ブランド戦略の違い
牛丼チェーンは「早い・安い・うまい」が魅力であるが、極端な低価格戦略は品質やサービスに影響を及ぼすリスクがある。彼らは価格だけでなく、総合的な顧客体験で差別化を図っている。
●ターゲティングとポジショニングによる戦略の違い
前項でターゲットの話を軽く出したが、それと、そのターゲットに対する魅力の打ち出し方=ポジショニングについて深掘りしてみよう。
ターゲティング
・松のや:価格に敏感な顧客層(学生、低価格志向のビジネスパーソン)、肉好きの顧客に焦点を当てている。
・競合各社:幅広い年齢層、ファミリー層、健康志向の顧客など、多様なニーズに応える戦略を取っている。
ポジショニング
・松のや:「低価格で高品質なとんかつ・丼物を提供する専門店」として市場に位置付けられている。物価高騰時代において、価格競争力と専門性を最大の武器としている。
・競合各社:「多彩なメニューと高品質なサービスで満足度を提供する総合的な外食チェーン」としてのポジションを確立している。価格だけでなく、顧客体験全体での価値提供を重視している。
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