なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月29日 7時20分
こうしたずさんなガバナンスが、後々の経営に大きな影響を与えたのです。
●ずさんなガバナンスが招いた不正会計
優等生と言われながらも、実態としてはぼろぼろだったガバナンス体制のもと、2008年にリーマンショックが起きました。多くの企業が大打撃を受けましたが、東芝も例外ではありませんでした。
東芝は2008年のリーマンショックを受け、2009年3月に約3500億円(決算訂正前)の赤字を計上。リーマンショックの影響で、東芝は約5000億円の増資を行いましたが、この時期は競合の日立も増資を行っており、状況としては仕方がなかったといえるでしょう。
ただ、その後の東芝の経営にはあきらかな問題がありました。上述のようなずさんなガバナンス体制により、業績不振を隠すために不正会計を行い、利益を無理やりかさ上げしていたのです。それが発覚したのが2015年でした。
不正会計の発覚を受け、2015年7月に第三者委員会が設置されました。これにより当時の社長が引責辞任するなどの動きがありましたが、実はこの第三者委員会もまた、名ばかりのものでした。
なぜなら、本来利害関係を持たない人たちで構成されるべき第三者委員会が、身内で固められていたからです。この第三者委員会の委員の一人は、東芝が財務アドバイザー契約を結んでいたデロイトの人でした。
また、調査主体もデロイトトーマツの関連会社が選ばれており、ここにもガバナンスのずさんさが現れていました。その結果、この第三者委員会は東芝に委嘱された調査を実施したものの、PC事業などの調査にとどまり、原発事業には触れていませんでした。
東芝は原子力事業も行っており、2006年に米国で原子力発電を行っているウエスチングハウス(以下WH)を買収していました。しかし、ずさんなガバナンス体制が災いし、このWHのモニタリングも適切に行えていませんでした。
2011年の東日本大震災により、原発建設のためのリスク管理が非常に厳しくなり、原発建設の費用が激増したという不可抗力もありますが、2015年10月にWHが0円で買収した原発建設を行う米国のS&Wが大規模な損失を計上しました。
そしてその影響からWHも連邦破産法11条(チャプターイレブン)の適用申請に追い込まれることとなったため、東芝は2期連続の債務超過に陥るという最悪の事態となったのです。
●上場維持への固執が招いた「金の卵」の売却
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