なぜ「金の卵」を守れなかったのか 東芝と日立、明暗を分けた企業統治のあり方
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月29日 7時20分
2期連続の債務超過。これは上場廃止となることを意味します。インフラ事業を多く受注する東芝は、上場維持にこだわりました。大変おかしな話ではありますが、日本国内でインフラ案件を受注する際、上場企業であるかどうかが重要視されるためです。
そこで決定したのが、当時日本で唯一世界と戦える技術を持っていた、半導体事業を行う東芝メモリの売却です。2期連続の債務超過により、上場廃止となることを免れることしか考えていないような決断でした。
しかし、その売却手続きに時間を要したことから、次なる手段としてアクティビストからの資金調達を決断しました。複数のアクティビストから約6000億円の資金を調達。その後東芝メモリの売却も進み、最終的に1兆5000億円ほどの資金を手元に確保しました。
今後大きな稼ぎを生み出す、いわば「金の卵」である半導体事業を売却してまで得た資金。にもかかわらず、その資金は即座に追加の株主還元に充てられてしまいました。本来であれば、事業を好転させることに対して資金を使うべきであるはずでした。
しかし東芝は、アクティビストが投資リターンのために経営に対して厳しい要求をしてくるということを理解せず、増資相手として選んでしまっていました。結果、株価が戻らない以上配当などの株主還元で対応するしかなかったのです。
東芝のこうした動きを一言でまとめるなら、「うそを重ねてドツボにはまり、良い事業を売らざるを得なくなり苦境に陥った」状態でしょう。世間的には、東芝が苦境に陥ったのはアクティビストを入れたことが原因だと言われていますが、そもそも「見せかけのガバナンス優等生」で、実態は嘘を重ねていたこと、不都合なことは先送りにしたこと、監査法人が不正を見抜けなかったことが根本的な問題だと感じます。
●東芝と日立の違い
2008年のリーマンショックの際、東芝の競合である日立も増資を行っていました。しかし東芝と決定的に違ったのは、当時、日立の川村隆会長自ら株主との対話を重ね、資本市場と向き合ったことです。
もちろん、会長自ら将来のビジョンを説明したところで、当然のことながらそれは将来の可能性でしかありません。したがって、株主からは非常にシビアな目が向けられ、厳しい質問をされます。経営者からすると、「なぜそんなことを言われなければならないのか」と感じるはずです。
川村会長のコメントで、自社を客観視することは非常に難しく、どうしてもひいき目に見てしまうため、なぜ自社の評価が悪く、株価が低いのかと感じてしまう。結局は外から見た人の意見のほうが正しく、企業にとって外の人は機関投資家だと言っています。
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