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船井電機「給料払えません。即時解雇です」 社員が気づけなかった「3つ」の危険信号

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月30日 7時10分

 さらに、2016年には広告事業やシステム開発を手掛ける「RVH」(東京都港区)が「株式交換」という形でキャッシュを使わない形で完全子会社化。しかし、2020年には売上高や契約獲得が鈍化しているとして、「たかの友梨ビューティクリニック」創業者として知られる高野友梨社長が経営する「G.Pホールディング」に21億円で譲渡された。

 ちなみに脱毛サロン業界は厳しく、2023年12月には「銀座カラー」も運営会社が倒産。返金を求める人が殺到するなど、消費者トラブルが絶えないことでも知られている。

 このようにさまざまな問題が指摘され、経営権も転々としてきたミュゼプラチナムが、明らかに不自然な形で子会社になって、わずか1年でこれまたよく分からない経緯で離れたのである。「うちの会社、何かヤバいことに巻き込まれたんじゃないの?」と心配した人もかなりいたはずだ。

 そして、この段階でもまだ何も危機感を抱いていなかった人でも、(3)の「2024年8月、『FACTA』報道」はさすがに事の深刻さを痛感したはずだ。

 船井電機は2024年3月から4月にかけて取締役9人のうち3人が途中辞任して、2023年6月に会長に就任したパナソニック出身の柴田雅久氏も代表権が外れてしまった。そして5月7日付、外部から一挙5人が取締役に加わった。本業とはあまり関係のない貸金業関係者などである。

 この時点では一般社員は「なんか知らない人が役員になったな」くらいに思っていたかもしれないが、8月21日に発行された『FACTA』を読んで青ざめたはずだ。

 先ほども紹介したように、ここに掲載された記事では「ミュゼ転がし」による資産切り売りの経緯や、新たに加わった役員もそこに関与したのではないかという疑惑が指摘されていたからだ。

 経営に興味のない一般社員であっても、さすがに「うちの会社で何かヤバいことが進行している」と察知したのではないか。

●今回の「悲劇」から学ぶべきこと

 ただ、この時点で「逃げよう」と思っても時既に遅しかもしれない。人によってそれぞれだが、転職エージェントなどを活用しても、転職活動を始めてから内定を得るまでは平均で2~3カ月といわれる。

 つまり、『FACTA』を読んで転職を決意した船井電機社員の多くは、10月24日に会社に「即時解雇」を言い渡されてしまった可能性が高いのだ。

 今回の「悲劇」からビジネスパーソンが学ぶべきは、自分の勤める会社の危なさを見極めるポイントは「本業」だけではないということだ。

 特に船井電機のように既存のビジネスモデルが斜陽となってきた場合、どうしても新たな成長エンジンを見つけようと、M&Aや業務提携で異業種進出などをチャレンジする。もちろん、それ自体は悪いことではないが、そういう時に近づいてくる者たちが「善意の人」とは限らない。

 特に「M&A」に関しては「事業再生」を掲げて入り込んで、言葉巧みに優良資産を手に入れたり、カネを巻き上げたりするという被害も報告されている。

 自分の業務以外にはなかなか関心が持てないだろうが、「逃げ遅れ社員」にならないためには、自分の会社が「ヤバいM&A」をしていないのか、目を光らせておいたほうが良さそうだ。

(窪田順生)

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