紙の領収書が復活 インボイス制度を緩和すべき、これだけの理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月15日 17時14分
インボイス制度の導入により、企業の経費精算業務がデジタル化から紙ベースに逆戻りする事態が発生
インボイス制度の導入により、デジタル化が進んでいた企業の経費精算業務が、紙ベースに逆戻りする事態が発生している。
日本CFO協会の調査によると、企業の86%が「業務が面倒になった」と回答。キャッシュレス決済でも紙の領収書が必要となり、政府が推進するデジタル化に逆行する事態となっている。同協会は実態調査の結果を踏まえ、9月に公共料金などでの規制緩和を求める提言を発表した。
提言では「電気・ガス・水道や鉄道など公共性の高い事業者からの領収書については、インボイスの要件を緩和すべきだ」と指摘。さらに事業者登録番号の確認頻度を年1回に抑えることなども求めている。
政府のデジタル化推進と、税の公平性を重視するインボイス制度の規制が相反する中、制度の見直しを迫る声が強まっている。
●キャッシュレス後退の「知られざる事情」とは?
2020年、企業の経費精算の現場で「領収書がいらない時代」が始まった。電子帳簿保存法の改正により、法人カードなどキャッシュレス決済であれば、データ連携できる場合に限り領収書の保存が不要となったためだ。企業のデジタル化を後押しする改正として期待を集めた。
しかし2023年10月のインボイス制度開始で状況は一変する。「キャッシュレス決済でも、領収書をもらい、事業者登録番号を確認し、税率区分をチェックする作業が必要になった」と日本CFO協会の中田清穂主任研究委員は指摘する。同協会の調査では、経費精算業務が「面倒になった」「どちらかと言えば面倒になった」と答えた企業が86%に達した。
特に深刻なのが公共料金の扱いだ。電気・ガス・水道料金などの支払い明細には事業者登録番号が記載されていないケースが多く、企業は別途インボイス対応した領収書を入手する必要がある。「毎月の請求に対して、Webでの明細と紙の領収書の二重管理を強いられている」と今回の調査に協力した経費精算システム大手、コンカーの舟本憲政ソリューションマーケティング部部長は話す。
この状況は企業の生産性向上の足かせとなっている。「人口減少下で生産性を上げなければならない日本において、時代と逆行する変化が起きている」と舟本氏は危機感を示す。電子インボイスへの対応も始まっているが、現状では請求書の領域が中心で、日常的な経費精算の現場での活用には至っていない。
企業側の負担も大きい。毎月の経費精算の際、経理担当者は事業者登録番号が有効かどうかの確認作業を強いられる。「取引先が免税事業者に変更していないかの確認まで求められる現状は、企業に過度な負担を強いている」と中田氏は指摘する。政府が進めるデジタル化と、インボイス制度による新たな規制の矛盾が、企業の経理現場に重くのしかかっている形だ。
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