なぜユニクロの柳井氏は「ウイグル綿花問題」を語ったのか 中国で炎上しても、“あえて”発言した理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月4日 7時26分
欧州連合(EU)の欧州議会とEU理事会は2024年3月、強制労働によって生産された製品の流通や輸入を禁止する規制案を3年後からスタートすることで暫定合意している。EU圏内の企業は、人権問題に対処するように義務付けられるのだ。もちろん、これは「新疆ウイグル自治区の綿花」を念頭においたものであることはいうまでもない。
だから、柳井会長はこれまでは決して明言しなかった「新疆ウイグル自治区の綿花」に触れた。しかも、相手はお膝元である日本のメディアではなく、英国国営放送のBBCというのも分かりやすい。
BBCはウイグル問題を積極的に扱っていて、2021年にはウイグル族の女性たちが新疆ウイグル自治区の「再教育」施設で、組織的にレイプや性的虐待、拷問の被害に遭っていたと述べたインタビューを報じた。中国外務省は、BBCによる「虚偽の報道」だと非難した。
つまり、欧州市場に対して「ユニクロは中国の人権侵害に加担していないですよ」とアナウンスするには、これ以上の適任はないのである。
●規制は3年後、なぜ今発言したのか?
……という見解を述べると、柳井会長の「失言説」を支持する方たちからはこんなツッコミもあるかもしれない。
「いやいや、それは強引なこじつけだ。ウイグル綿花が本格的に規制されるのは3年後なんだし、ここまで急いで中国の不買をあおるようなことを言う必要はない。単なるミスだろ」
もちろん、柳井会長も人間なのでそういう可能性もなくはない。ただ、規制が3年後だから急ぐ必要がないというのはちょっと違う。現在、欧州市場で覇権を握っているライバルたちは、台頭著しいユニクロの評価を地に落としたい。そこで「ウイグル綿花問題」は格好の材料なのだ。
例えば、欧州市場で圧倒的なシェアを誇っているスウェーデン衣料品大手H&Mはいち早く、新疆ウイグル自治区産の綿花を製品に使わないと宣言している。そのおかげで欧州内では「人権侵害に加担している企業」と攻撃されることはなくなったが、その代償として中国政府主導の不買運動が起きて、客離れが進み閉店ラッシュが起きた。
そんな苦い経験をしているH&Mの立場になっていただきたい。これまで自分たちの独壇場だった欧州に、ユニクロがじわじわと迫ってきた。どうにかしてこの勢いを止めたいはずだ。
彼らからユニクロを見れば、新疆ウイグル自治区産の綿花についてはノーコメントを貫いてきたことで、中国の消費者と、欧州の消費者の双方に「いい顔」をしてきている。シンプルにムカつくはずだ。
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