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スポーツカーに未来はあるのか “走りの刺激”を伝え続ける方法

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月20日 6時10分

 さらに衝突安全性のためにエアバッグがいくつも組み込まれ、ボディサイズも拡大していくと、車体は当然重くなる。ABS(アンチロックブレーキシステム)や横滑り防止装置などの電子デバイスも、ドライバーをサポートして万が一に備えるために必要になる。これらは現代のクルマとして、スポーツカーとて避けられない条件だ。それを踏まえて開発せざるを得ない環境になったのは仕方のないことだ。

 だが、実用性の高さを考慮した4人乗りや、渋滞でも疲れない機能などを盛り込んでいくと、スポーツカーからどんどんかけ離れていく。

 スーパーカーの類になると、もはやエンジン性能が一般ユーザーには扱えない領域に達し、ほとんどが2ペダルAT仕様となっている。一方、そこまでの性能ではない高性能車も、サーキットではMTより2ペダルATの方がラップタイムは速い傾向にある。けれども速さを追求するのではなく、クルマを操ることをスポーツとするスポーツドライビングであれば、ATしか設定のないクルマは不十分だ。

 例えるなら、楽器演奏のようなものだ。クラシックピアノより電子ピアノの方が演奏は楽だ。伴奏を付けてくれたり、何なら自動演奏もこなしてくれたりする。そんな楽器に手助けしてもらう演奏がよければ、それを選べばいいだけのことだ。

 単純に速く走るのが目的であれば、パワーがあって太いタイヤと固めた足回り、高いボディ剛性などの条件をそろえればいい。2ペダルATで4WD(四輪駆動)のクルマであれば、誰でも速く走らせられるだろう。

 しかし、ドライバーの操作に繊細に反応する“人車一体感”を追求するのであれば、車体の軽さや大きさ、重心やロールセンターの高さ、エンジンや変速機の反応の良さが重要な要素になる。

 つまり、どんなに時代が変化しても、スポーツカーはスポーツドライビングのためのクルマであり、それ以外の要素を盛り込んだクルマはスポーティーなクルマ、高性能なだけのクルマなのだ。

●アイオニック5Nの加速性能は刺激的だが……

 少し前のことになるが、ヒョンデの超高性能EV、アイオニック5Nに試乗した。SUVベースながら、強化したモーターを前後に備える4WDで、パフォーマンスが注目されるモデルだ。

 EVは加速力は高いものの、モーターが強力であるほどモーターやバッテリーが発熱し、サーキット走行などしようものなら、2~3周でセーフモードが発動してしまうケースが多い。しかしアイオニック5Nは、モーターやバッテリーのサーマルマネージメントも強化することで、EVの弱点である熱ダレを抑え込んでいるのが特徴だ。そのためEVレースで圧倒的な速さを見せつけているのである。

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