「ホンダ+日産=世界3位」素直に喜べない理由は? パワー半導体をめぐる“次の競争”
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月25日 6時20分
ホンハイはそんな「水平分業型EV開発」を進めているわけだが、一つだけ垂直統合、つまり「自前」にこだわっているところがある。SiCパワー半導体だ。
●なぜ「日の丸パワー半導体」が打撃を受けるのか
ホンハイはMIH設立から5カ月後、台湾の半導体企業から工場を買収して、SiCパワー半導体の量産に乗り出している。さらに注目すべきは、そこで「最強」のパートナーと手を組み始めたことだ。
そう、パワー半導体の巨人、インフィニオン・テクノロジーズである。
2023年5月、両社はEV向けシステムの共同開発に関する基本合意書を締結。そこにはSiCパワー半導体を用いた省エネルギー車載機器の開発などで協力する内容も含まれている。また、同時期には半導体設計会社「PowerX」を立ち上げ、2025年中にはSiCを用いた車載モジュールを製品化していく、と表明している。
さて、ここまで説明すれば、なぜホンハイが日産を買収すると、「日の丸パワー半導体」が打撃を受けるのかが分かっていただけただろう。
もしホンハイが日産を傘下に組み込んで、どういう形にしろEV開発が進んでいくということは、そこに組み込まれるのはホンハイのSiCパワー半導体であることは間違いない。
ブランド力が低下しているとはいえ、世界販売台数344万台(2023年度実績)規模の自動車メーカーのサプライヤーになれば、ホンハイのパワー半導体事業は急成長していく。その恩恵は共同開発パートナーであるインフィニオンにももたらされるはずだ。
今でさえ「巨人」の背中に遠く及ばない日本のパワー半導体が、さらに引き離されてしまうのは容易に想像できよう。
●パワー半導体の分野でも「巨大連合」を
もちろん、今は世界的なEV不振となっているので、パワー半導体の成長スピードは予想しずらい。インフィニオンとて安泰ではないし、ホンハイのEV戦略も見直しを迫られるだろう。
ただ、中長期的に見れば、パワー半導体の需要が減ることはない。そういう戦略物資をサプライヤーが安定的に開発・製造をする方法を考えたとき、最も合理的な方法は「バイヤーを買収して傘下に入れる」ことだ。だから、ホンハイは日産を手に入れようとしたのではないか。
日産買収が防げたとしても、それで日本のパワー半導体が成長できるわけではない。「巨人」と対等に渡り合うためにも、そろそろこの分野でも「巨大連合」が必要なのかもしれない。
(窪田順生)
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