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旭化成社長に聞く「事業ポートフォリオ転換のワケ」 トランプ政権誕生の影響は?

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月13日 18時52分

 「ベストオーナー視点」での戦略については、アクションはしていますが、相手方の事情もあり交渉次第というところがあります。このためマテリアル領域における化学品事業の譲渡など1000億円レベルの意思決定は2024年度中か、一部は2025年度中にはほぼめどをつけたいと考えています。これについては前のめりで交渉するつもりはないので、時間軸は少し変化する可能性はあります。

――成長牽引事業としてGG10を掲げています。伸びる分野には思い切って投資する方針を取っていますが、その理由は?

 旭化成は多角化経営を進めてきたので、従来は個別に利益が上がりそうな分野に投資をしてきた歴史があります。ただこの方法では投資する事業範囲が広くなり、稼いだ資金をどのように配分するかが難しくなります。このためポートフォリオを変えながら、選択と集中を進めていくことを考えると、成長分野がどこなのか狙いを定める必要があります。

 そこで成長ポテンシャルのあるGG10を、M&Aなども使いながら進めています。GG10の総投資額は、カナダでEV向けのセパレーターを製造する工場建設がスタートしたこともあり、中計当初の想定から1000億円増えて合計7000億円になっています。

●トランプ政権誕生の影響は?

――1月にトランプ政権が誕生するとEV(電気自動車)には逆風になりそうですが、セパレーター向け投資を軌道修正する考えはないでしょうか。

 2023年4月の時点で北米向けのセパレーター投資は決まりかけていました。ですが経営会議や取締役会の場で、リスクに対する対応が不十分だということで、さらに検討を加えることになりました。その結果、1年遅らせた2024年4月に、カナダで工場を建設することを決定し、1800億円の投資をすることになりました。結局、当社が75%、ホンダが25%を出資する合弁会社を設立します。

 ほかの電池メーカー含めキャパシティライト契約(特定の顧客に対して、一定期間・一定量の生産供給能力を優先利用する権利を販売する契約)の交渉をしています。日本政策投資銀行からの出資もあり、カナダ政府から補助金も出ますので、1800億円の投資金額のうち、当社からの資金負担は600億~700億円程度になり、資金面のリスク分散になっています。また垂直統合的に、出口の需要を綿密に想定した計画になっています。

 しかし「EVの需要面が厳しくなるのでは」「政権が代わると違う風が吹くのでは」という懸念があったのは事実です。トランプ政権になった場合の想定はしていました。投資を計画した時には、2030年の北米のLIB用セパレーター需要は50億平米から60億平米くらいにはなるだろうと思っていました。いまのシナリオでは、悪くても約30億平米と厳しい予想がされる中で、今回の投資で想定している生産能力は約7億平米です。

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