なぜ星野リゾートは「マルチタスク」に取り組むのか? 独自の働き方改革が生んだ意外な効果
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月30日 6時55分
星のや軽井沢。軽井沢は星野リゾート創業の地
日本は生産性が低い国と言われている。2023年の日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たりの付加価値)はOECD加盟38カ国中31位。主要先進7カ国で最低となっている。
人手不足の中で、どのように効率的な働き方改革を進めるのか。労働集約型のホテル・旅館業で、ユニークな方法で労働生産性を高める取り組みを行っているのが、星野リゾート(長野県軽井沢町)だ。
伝統的に日本のホテル・旅館業では、各セクションで専門性を高めて、スペシャリストを育ててきた。例えば、フロントはフロント、レストランはレストランに専念することで、スキルを磨き、高いサービスを実現してきたのだ。つまり、究極までシングルタスクを追求することが最善とされてきた。
それに対して、星野リゾートでは、1990年代より、国内外の施設ごとにサービスチームを形成して、マルチタスクにチャレンジしてきた。つまり、1つのタスクではなく、フロントもレストランも横断的に複数のタスクをこなせる人材を育成してきたのだ。
これにより、フレキシブルなシフトが可能になり、繁忙期の人手不足にも耐性が高い組織になっている。その成果や、働き方の実態を取材した。
●4つのタスクを身につける
星野リゾートでは、サービスチームのタスクは大きく4つに分類される。「客室清掃」「調理」「レストランサービス」「フロントサービス」だ。4つの枠に収まり切らないものもあるが、臨機応変に担当者を割り当てていく。
新入社員として入社すれば、新卒、キャリア採用にかかわらず、OJTにより、複数のタスクの習得を同時並行で進める。
タスクを一通りこなせるまでには、人によって習得のスピードは違ってくるが、概ね半年ほど掛かるという。
調理の現場に、料理人以外の人が入って大丈夫かと思うかもしれない。もちろん、専任で調理業務を行うスタッフもいる。しかし、厨房では、材料を切ったり量ったり、調理する食材を個別に仕分けしたりと、専門に勉強してきた料理人でなくてもできるさまざまなことがある。そうした部分が、マルチタスクに組み込まれている
夕食の前には仕込み仕事をしていた人が、実際の夕食の時間にはレストランのスタッフとして顧客の案内や注文取り、配膳をしているケースもある。自分たちが参加して作った料理を、顧客の席にまで運ぶと、気持ちの入り方がそうでない場合とは全く違ってくる。
このような実践の積み重ねが、質の高いサービスを生んでいく。
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