王者・丸亀製麺を挑発? はなまるうどんの「香川マウント」は成功するか
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月15日 6時20分
これまで述べてきたように、一般消費者は「本物の讃岐うどんか否か」という点はそれほど気にしていない。香川を拠点にして「われらが本物であっちは偽物だ」と訴えたところで、そこまで響かないだろう。
ただ、勝機があるとしたら、はなまるうどんが今、大きく掲げている「多様性」だ。
「おいでまい!さぬきプロジェクト」の記者会見で、同社マーケティング本部CMOの高口裕之氏はこの25年で、ローカルフードだった讃岐うどんが全国区になった半面、「讃岐うどんの画一的なイメージが広がっている」という懸念を指摘した。
本場香川の讃岐うどんは店ごとのバラエティーに富んでいて、味付けも喉越しもまったく違う。そのように「個性」の強いソウルフードなので、香川では讃岐うどんの名店をハシゴしたり、製麺所巡りをしたりする人もいるのだ。
●「はなまるうどん」が不動の地位を築くには
はなまるうどんが丸亀製麺に決してまねのできないことをやろうと思ったら、この「個性」を前面に押し出すのも1つの手だ。すでに閉店した讃岐うどんの名店の味を再現するなどの取り組みも始まっているが、さらに踏み込んで、店舗ごとのオリジナルメニューや、店のスタイルもバラバラにしていく。
「チェーンなのに各店が個性で勝負」というのは、既に「大阪王将」や「餃子の王将」などでも実践している。ただ、個人的には本当に丸亀製麺に対抗するのなら、「個性」どころではなく「カオス」くらいにすべきだと思う。店ごとにメニューはもちろん、店内の雰囲気も統一感ゼロにする。地方展開の場合、それくらい針を振り切ってやったほうが「利点」もあるからだ。
北海道・函館の「ラッキーピエロ」というご当地ハンバーガーがある。ラッキーピエロは現地で、マックやモスバーガーよりも強い。秘密は市内にある店舗がそれぞれ「個性的」なので、地元の常連客だけではなく、函館にやって来た観光客も立ち寄る観光スポットになっているからだ。
はなまるうどんは既に香川県と手を組んでいるので、地元の讃岐うどん店はもちろん、地元観光企業ともコラボをしやすい。これから県内の店舗を順次改装していくそうなので、ここを「うどんも食べられる観光スポット」となるように生まれ変わらせることができれば、ラッキーピエロのような不動の地位を築けるかもしれない。
丸亀製麺の影響がほぼない香川で、このような「地域観光拠点型店舗」というモデルケースを確立すれば、全国にも順次、展開していける。人口減少で地方が疲弊していく中で「観光」は今後ますます地域経済を支える役割となっていくからだ。「香川と讃岐うどんのアンテナショップ」的なコンセプトは、丸亀製麺の「讃岐の製麺所」というコンセプトとも十分に渡り合える。
●「はなまるうどん」の逆襲が始まるか
いずれにせよ、これまで「表面だけを着飾ったようなモノはいらない」といってきたはなまるうどんが、「香川」「讃岐」という表面的な要素にこだわり始めたのは、企業としては喜ばしい変化だと思っている。
讃岐うどんの本場・香川から、はなまるうどんの逆襲が始まるのか。それとも世界でも「UDON」を広め始めた丸亀製麺が王座を守り続けるのか。
北九州からは、すかいらーくグループの傘下となった「資さんうどん」も勢力を広げてきた中で、うどん王を巡る熱い戦いから目が離せない。
(窪田順生)
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