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「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月16日 6時10分

「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地

JALとANA、過去の危機を乗り越えた戦略を比較

 年末年始、家族で国内外を旅行した方も多いのではないでしょうか。数年前のコロナ禍がまるでうそだったかのように、海外旅行に行く方の姿や帰省ラッシュの報道を目にするなど、これまで通りの年末年始が戻ってきました。

 近年では、インバウンド需要も旺盛で、日本の観光業界や航空業界も盛り上がりを見せています。空港の混雑ぶりや国際線の新規就航のニュースからも、コロナ禍で打撃を受けたこれらの業界も回復基調であることがうかがえます。

 実際、2024年3月期のANAホールディングス(以下、ANA)の決算は過去最高益。日本航空(以下、JAL)も大幅な増収増益となっています。しかし、両者の財務諸表を見ると、意外にもインバウンド需要などによる好調ぶりを、手放しで喜べる状況ではないことが分かりました。

 今回は、2000年代に起こった米国同時多発テロやイラク戦争などの外的要因がどのようにJALとANAの財務に影響を与えたのか。航空業界にとって大きな試練となったコロナ禍を両者がどのように乗り越えたのか。また、今後見通しがなぜ手放しで喜べない状況と考えるか、解説します。

●外的要因に左右されやすい航空業界

 航空会社の経営状況は、これまでさまざまな外的要因に大きく左右されてきました。代表的な例は、2001年9月の米国同時多発テロ、2002年末に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)、2003年3月に始まったイラク戦争、そして2008年のリーマンショックなどです。

 ANAの2000年代の財務諸表を見ると、営業利益率は2001年より前は6.4%だったものが、米国同時多発テロでは2%未満に落ち込みました。これはテロにより旅客需要が減り、利益率が低下したことを示しています。2002年の日韓ワールドカップというプラスの要因があったものの、SARSの影響で再び需要が落ち込み、営業赤字に陥りました。

 その後は順調に回復し、営業利益率は5~6%台まで回復しましたが、2008年9月のリーマンショックで0%近くまで落ち、2010年3月期には再度営業赤字に陥りました。

 一方、JALはどうだったのでしょうか。2001年の米国同時多発テロによる需要減で赤字に転じ、2002年の日韓ワールドカップでの需要は取り込みつつも、その後のSARSやイラク戦争などで大きな影響を受けた点はANAと変わりません。

 しかし大きく違ったのは、2004年に当時の日本エアシステム(JAS)と統合したことです。経営赤字に陥ったタイミングで統合し、不採算路線の整理や人件費の削減などがうまくいかなかったこともあり、2010年に経営破綻しました。

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