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悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月16日 8時10分

悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に

話を聞いたのは営業部 広報販促課の高橋俊介氏

 個人情報保護への意識が高まる昨今、シュレッダーは家庭でも求められるようになった。だが、シュレッダーは置き場所を取るし、重いし、値段が高いのも事実だ。そんな既存製品の課題を解決したのが、コンパクトな「ハサミ型シュレッダー」である。

 このハサミは当初、「刻みのりを簡単につくれるハサミ」として売り出していたという。刻みのりを切るために新たなハサミを買う人は少なく、わずかしか売れないお荷物商品だった。それが視点を変えただけで累計100万本を突破する大ヒット商品へと化けたワケだ。

 新潟県三条市の中小メーカーアーネストが仕掛けた、“切り口”を変えたマーケティング逆転劇を見ていこう。

●シリーズ累計106万本販売の“デスクサイド・シュレッダー”

 アーネストが手掛ける「秘密を守りきります!」は、手のひらサイズのハサミ型シュレッダーだ。一見すると普通のハサミだが、5枚の刃を搭載している。この刃によって、レシートや領収書を一度切るだけで細片に裁断できる。

 銀行の明細書なら2枚同時に、はがきや名刺など厚みのある用紙もしっかりと切れる。

 幅7センチ、全長19センチ、重量125グラムというコンパクトさも特徴だ。デスクの引き出しやペン立てに収まるサイズで、必要な時にすぐ取り出せる手軽さが好評だという。家庭に届くダイレクトメールや、日々の買い物でたまるレシート、各種請求書など、個人情報が記載された書類を手早く処理できる。オフィスでも活用され、コンパクトながら確実な情報漏えい対策ツールとして注目されている。

 2006年の発売以来、販売数はシリーズ累計で106万本を突破した。生協や通販、東急ハンズなどの専門店に加え、自社オンラインショップでも販路を展開している。2022年1月には軽量化したモデル「秘密を守りきります!ライト」も投入。こちらも約2年で3万2000本を販売するヒット商品となった。

●低迷商品が大化け きっかけは「取引先の奥様」

 この商品は当初、全く異なる用途を想定して売ろうとしていた。アーネストは2005年2月、同商品を「きざみ海苔ができます!」という商品名で発売。そばやお好み焼きなどに使えるきざみ海苔(のり)を、必要な分だけ手軽に作れるハサミとして打ち出した。

 しかし、使用シーンが限定的なことに加え、市販のきざみ海苔が安価だったこともあり、発売から1年間の販売数はわずか7000本。商品の廃番も検討せざるを得ない状況となる。「刻みのりを切るためだけに、刻みのりよりも高いハサミを買う人はあまりいませんでした」と、営業部広報販促課の高橋俊介氏は苦笑する。

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