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悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月16日 8時10分

 「社員全員が開発者です」と高橋氏が語るように、アーネストでは月2回の開発会議に加え、4カ月に1回の「商品提案会」を開催している。この提案会には商品開発課だけでなく、総務、経理、品質管理、物流など、全部署の社員が参加する。日常生活で感じた「あったら便利」というアイデアを持ち寄り、新商品の種を生み出すという。

 「以前は2カ月に1回、さらにその前は毎月提案会を開催していました。『乾いた雑巾を絞る』ような状態だったと先輩から聞いています」と高橋氏。それでも提案会を続けることで、社員一人一人が常にアンテナを張り、新しいアイデアを探す習慣が根付いていった。

 同社の商品開発では、あえて徹底的なマーケティング調査は行わない。「正直、しっかりマーケティングをすればヒットする確率は上がると思います。でも、そうすると他社と同じような商品になってしまう。私たちに求められているのは、『こんなの製品化するの?』と思われるような商品。それを真面目に作り込むことなんです」(高橋氏)。

 判断基準は「イケるのでは?」という感覚。新潟県燕三条という金属加工の街で、他社が作らないような商品を開発し続けてきた同社ならではの哲学がそこにある。

 「工場の方から『これは他社には提案しないけど、アーネストさんなら』というアイデアをいただくこともあります」と高橋氏。地元でも“ちょっと変わった会社”として知られる立ち位置が、かえって新しい発想を呼び込む好循環を生んでいるようだ。

 アーネストの商品開発は、非効率に見えるかもしれない。だが、「きざみ海苔用ハサミ」を「個人情報保護用シュレッダー」に転換する発想や、片足だけのスリッパ、虫を分別する掃除機ヘッドといったアイデアは、効率や合理性を追求するAIからは生まれにくいのではないか。時に非効率に見える行動の中に、人々の心を掴むヒントが隠れている。

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