悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月16日 8時10分
だが転機は思わぬところからやってきた。営業担当者が取引先を訪問した際、「妻が届いたDMやレシートの処理にこのハサミを使っている。手軽に使えて重宝している」という話を耳にしたのだ。
時あたかも2005年は個人情報保護法が全面施行された年だった。企業だけでなく、一般家庭でも個人情報の取り扱いへの意識が高まっていた時期だ。社内で即座に方向転換を決断し、グリップの色を変え、パッケージデザインを一新。「秘密を守りきります!」として2006年1月に再デビュー。販売数は初年度で20万本、前身モデルの約28倍という驚異的な数字を記録した。商品の見せ方の“切り口” を変えたことで販売数は一気に跳ね上がった形だ。
「一時は品切れが続くほどの人気でした」と高橋氏。その後、多くのメーカーが類似品を投入したが、「きざみ海苔用からシュレッダーへ」という商品開発の裏話は同社ならではのストーリーだ。
●「金太郎あめ型ゆで卵」に「片足スリッパ」 商品開発の試行錯誤
アーネストには、こうした独創的な発想で商品開発を行う文化が浸透している。創業当時から販売を続ける「ドリームランド」は、その代表格だ。
断面に星やハートの模様が浮かび上がる“金太郎あめ”のようなゆで卵が作れる調理器具である。卵の白身と黄身を分け、白身を先にゆでた後に黄身を入れるという手間のかかる製法だが、細く長く売れ続けているという。
「つばめのパンナイフ」というパン切り包丁は、2、3カ月待ちが出るほどの人気商品だ。一般的なパン切り包丁は刃全体にギザギザが付いているが、このナイフは先端と手元側だけにギザギザを配置。真ん中はストレートな刃を採用することで、パンの形が崩れにくくなるという。
もちろん、全ての商品が成功するわけではない。宅配便の受け取りなど、ちょっとした外出時のために開発された「ひょいと一歩 足de纏(あしでまとい)」も、同社らしい発想の商品だ。
前後左右どちらからでも履ける片足用スリッパだが、あまり売れなかったという。「『あしでまとい』という言葉のイメージが良くなかったかもしれません」と高橋氏。当時の社長が命名にこだわったものの、ネーミングの成否については今でも社内で話題に上がるという。
●「イケるのでは?」で商品化のゴーサイン
なぜアーネストからは、こうしたユニークな商品が次々と生まれるのか。その秘密は、同社特有の商品開発の仕組みと考え方にある。
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