1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「生成AI×RAG」の可能性 新潟日報「生成AI研究所」創設の狙いは?

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年2月1日 19時10分

●第1号ユーザー・ダイニチ工業の期待

 第1号ユーザーであるダイニチ工業は、なぜ新潟日報生成AIの導入をいち早く決めたのか。同社の野口武嗣取締役は「当社の2024年のテーマとして、生成AIを企業としてどのような使い方ができるかの検討課題があった」と話す。

 「私はもともと広報を担当していたこともあったのですが、新潟日報生成AIを試しに使ってみた際、アウトプットに対して新聞の記事が出典として同時に見られることに便利だと感じたのが最初の直感です」(野口取締役)

 同社が生成AIを導入しようとしたきっかけの一つが、暖房器具を中心に取り扱う事業モデル特有の問題があったという。

 「当社は暖房商品を中心に成長してきた会社なのですが、10月から12月までの第3クオーターで売上高と利益の大半を稼ぐ収益構造となっています。そしてどの時期にどの地域でどれだけ売れるかというのは、気象条件によって左右される面があります。この予測を人間がやるには限りがありますので、AIでより精度高く予測できないか、という期待があります」(野口取締役)

 新潟日報生成AIを活用することによって、少なくとも県内の需要予測や販路拡大に役立てたい狙いがある。

 「直近の活用方法としては、新聞の経済面の企業側の目線と、生活面の消費者側の目線の両面をうまくAIに分析させて、昨今のトレンド分析や、新商品を展開する理由付け、商品企画やプレスリリースなどの肉付けに利用していきたいですね。こうした分析をするためにこれまで図書館で縮刷版を見て分析をしていたので、大きな生産性向上につながると確信しています」(野口取締役)

●地方紙の新たなビジネスモデル創出か

 新潟日報生成AIは、当面は個人への展開はせず、企業や自治体などの団体向けの展開に徹する方針だ。一方で、新潟日報の読者の大半は一般消費者であり、どのように市民に還元するのかは気になるところだ。

 「最初は企業、団体との連携からスタートさせていきますが、新潟日報の読者は高齢者を中心に、数多くいます。一般の読者を中心に、何かうまくつながれるような仕組みができないかとは考えています。例えば、新聞を定期購読している人が受けられるサービスも今後あり得るかもしれません」(鶴間社長)

 一方で、新潟日報に限らず、新聞データベースは各自治体の図書館に行けば、館内のPC端末で調べられるのが今や当たり前になっている。これと同様に、いわばB2B2C的に、図書館を通じて新潟日報生成AIの一般消費者への提供も十分に考えられるという。

 「現段階では、個人の需要が予測できない部分や価格の面もあり、企業や団体のみの展開にしています。しかし個人からの問い合わせがあれば、どのようなサービスとして展開できるのか、検討していきたいと考えています」(鶴間社長)

 新潟日報生成AI研究所の取り組みは、地方紙の新たなビジネスモデル創出の可能性があるだけでなく、地域社会の課題解決と生産性向上にもつなげられる意義深い挑戦だといえる。この施策がうまくいけば、モデルケースとして他の地方紙でも応用できるのは大きい。

 地方紙を中心に、新聞雑誌などの記事データ数は膨大で、1億件以上の記事データを提供する国内サービスもある 。これはかつて「新聞大国」と呼ばれ、今でも人口あたり世界トップクラスの新聞発行部数がある日本ならではの文化資源だ。これを生成AIに活用することができれば、他国に差をつけられるかもしれない。

(河嶌太郎)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください