ドンキ「みんなの75点より、誰かの120点」が、マーケティング戦略的に正しいワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月31日 6時10分
ドンキの「偏愛めし」が好評だ
「みんなの75点より、誰かの120点」――ドン・キホーテ(以下、ドンキ)のPB「偏愛めし」シリーズが掲げるこのコンセプトは、一見するとリスクの高い挑戦のように映る。しかし、実際には同シリーズから数々のヒット商品が生まれ、ビジネスとしても成功を収めている。大衆向けではなく、特定の顧客層を狙った“とがった商品設計”が、なぜ優れたマーケティング戦略として機能するのか。その背景と要因を考察したい。
●「偏愛めし」とは?
「偏愛めし」とはドンキが展開する食品シリーズである。公式Webサイトを見ると、「みんなの75点より、誰かの120点」というコピーとともに「開発者全員が“好きな人は絶対に好き!”と確信を持てる、偏愛メニューだけをお届けしていく」という宣言が目を引く。
食の好みは人それぞれなのに、世の中に並ぶ弁当や総菜は“万人に嫌われない及第点”ばかり。それではかえって、本当に強く愛される商品が生まれにくいのではないか――そんな問題意識が根底にあるようだ。
マーケティングの観点から見れば、これこそが「ニッチ戦略宣言」である。「万人向けの商品」ではなく、「特定の顧客にとって圧倒的な価値」を提供する方向性だ。その結果、大勢に好まれるかどうかは度外視してでも、一部の顧客にとって圧倒的に魅力的な商品を作り出そうという発想が明確に打ち出されている。
ドンキの偏愛めしと、他業界におけるニッチ戦略の事例を見ていこう。
●風変わりな商品が人気に
偏愛めしの商品群を見ると、どこか“普通”の発想では企画されにくいメニューが並び、一目で「これは偏愛だ」と分かる個性的なネーミングやコンセプトが際立つ。例えば、以下のようなラインアップが代表的である。
フライドチキンの皮だけ
ドンキいわく、累計15万個突破の人気商品である。「チキンの皮だけが食べたい!」という強い欲求を形にした一品だ。フライドチキンの皮特有のスパイス感と油のうま味がビールとの相性抜群で、夕食の一品やおつまみとして活躍する。世の中には「フライドチキン本体より皮が好き」という層が一定数存在し、彼らにとっては“待ち望んだ理想の商品”となったのだろう。
アメリカンドッグのココだけ
発売からわずか1カ月で1万7000個を売り上げたヒット商品。アメリカンドッグ好きにとっては“希少部位”ともいえる根元のカリカリ部分だけを集めたという発想が秀逸である。サクサクとした食感とほんのり甘い生地がクセになり、スナック感覚でも楽しめる。ケチャップやマスタードで味変が楽しめる点も魅力だ。
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