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「円しか稼げない会社は、沈む」 星野リゾート初の北米大陸進出、“無名の地”選んだ狙い

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年2月3日 8時10分

「円しか稼げない会社は、沈む」 星野リゾート初の北米大陸進出、“無名の地”選んだ狙い

星野リゾート代表の星野佳路氏(筆者撮影)

 各国で自国優先の保護主義的な経済傾向が強まる中、海外向け投資のリスクが懸念される。こうした中にあっても宿泊大手の星野リゾートは、コンスタントに海外進出を続けている。

 同社はバリ(2017年1月開業、以下同)、台湾(2019年6月)、ハワイ(2020年1月)、中国(2021年4月)、グアム(2023年4月)に続く6件目の海外進出先として、2028年にアメリカ・ニューヨーク州のシャロン・スプリングスに温泉旅館を開業する予定だという。北米大陸への進出は、これが初となる。

 星野リゾート代表の星野佳路氏にインタビューを行い、海外進出はリスクにならないのか、なぜ進出先としてシャロン・スプリングスという無名の場所を選んだのか、どのようなサービスを提供するのかなど、今後の海外戦略について話を聞いた。

●無名の場所に進出する理由

――星野リゾートはコンスタントに海外進出を続けているが、この先も進出は続くのか。

 海外進出を進める理由として、日本の人口減少に対する強い危機感がある。今から50年後、100年後を見据えると、人口減少に伴う国内需要の減少などから世界の中での日本の経済的なプレゼンスは落ちざるを得ない。

 そうなれば、円だけでしか稼げない会社は、相対的に地位が沈むことになる。われわれがホテル業界で生き残っていくためには、必然的にドルやユーロなど外貨で稼げる企業にならざるをえず、そのためには海外に打って出るしかない。

――初の北米大陸進出先に決まったニューヨーク州のシャロン・スプリングスは、どのような場所か。

 候補地は、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークなどの大都市から車で3~4時間圏内で、かつ温泉が湧いている場所という条件で探していた。シャロン・スプリングスはニューヨークからもボストンからも3時間半で行ける場所だ。

 シャロン・スプリングスが温泉地として最も繁栄していたのは1870年代。私が日本でこれまで手掛けてきた再生案件は1980年代のバブル期に繁栄したものが多いので、それらと比べるとずっと歴史が古い。

 最盛期には60軒くらいのホテルがあったというが、今はわずかに1軒が残るのみだ。エアラインの発達によって、フロリダやコロラドなどのリゾート地へも簡単に行けるようになったために衰退した、大都市近郊の観光地の典型例だ。

 最終的に進出先として選んだ理由は、日本と同じように四季があるのが大きい。お客さまに季節の移ろいを感じていただくことが、日本旅館におけるサービスの真髄(しんずい)だからだ。シャロン・スプリングスには落葉広葉樹の森もあり、植生が(星野氏の出身地の)軽井沢に少し似ている。雪も降るので、雪見風呂なども楽しんでいただけるだろう。その意味で、アリゾナやネバタにも温泉はあるが、候補にならなかった。

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