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「円しか稼げない会社は、沈む」 星野リゾート初の北米大陸進出、“無名の地”選んだ狙い

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年2月3日 8時10分

 当時、私はホテル経営を学ぶためにアメリカの大学院に留学していたが、多くの同級生たちから「日本人がアメリカに来て、なぜ西洋式のホテルを運営しているのか」という質問を受けた。つまり、欧米人から見れば、日本人が海外で西洋式のホテルを運営するというのは、日本人が海外ですしを握るのではなくフランス料理をやっているのと一緒であり、必ず「なぜ?」という疑問が湧く。もちろん悪いことではないが、スッと腹落ちしない。

 日本人は好むと好まざるとにかかわらず、海外に出るときには、どうしても日本文化というものを背負わざるを得ない。そして、日本文化は、世界においてリスペクトすべき重要な文化として認識されている。だから、日本人が海外に進出するときには、どこかで「日本らしさ」を出さないと彼らも納得しない。これは、マーケティング上、非常に重要な視点だ。

――今回の北米の施設では、日本の「星のや」や「界」で提供しているのと同じサービスを提供するのか。それとも何らかのアレンジが必要になるのか。

 温泉旅館というものは世界のホテルの中で1つのカテゴリーを構成しうる、普遍的な価値を持つものだと思っている。従って北米においても、特別に今までと違うものをつくろうとは思っておらず、建物に関しては日本人の建築家を起用し、モダンテイストの「和」を基調としたものにする。また、スタッフの働き方も、われわれが「星のや」や「界」でやってきたのと同じように動いてもらう。

 とはいえ、国内の施設においても、施設ごとにテーマは変えている。「星のや」であれば、軽井沢では「谷の集落」、富士では「丘陵のグランピング」、沖縄では「グスクの居館」といったストーリーを掲げている。つまり、地域らしさを反映しており、既存の施設と全く同じということにはならない。

――温泉旅館の普遍的な価値、変えてはならない本質とは、どのような部分か。

 いくつかの要素がある。1つは日本的な建築デザイン、空間、世界感がしっかりと実現されていることだ。日本らしい建築、部屋、スタッフの衣装のデザインなどを含めた日本旅館は、「日本文化のテーマパーク」として海外の人たちの興味をひくはずだ。また、リゾートは周囲のランドスケープ(風景)の要素が大きいので、建物とランドスケープの調和ということも非常に大事になってくる。

 2つ目は日本食をしっかり出すこと。3つ目はわれわれならではの「おもてなしの在り方」を提供し続けることだ。先ほども触れたが、季節の移ろいに合わせ、お客さまが訪れる度にしつらえを変えていくということもとても大事だ。

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