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「AIエージェント」とは何か、何ができるのか セールスフォースの会見から読み解く

ITmedia エンタープライズ / 2024年10月29日 7時0分

 図4には5つの提供形態が記されているが、上から4つ目までは各分野でのAIエージェントの活動なのに対し、5つ目の一番下は個別の業務に対応したカスタムAIエージェントも構築可能としている。つまり、各分野に予め対応したAIエージェントと、カスタマイズできるAIエージェントの2つの提供形態が用意されているわけだ。

 Agentforceについてこのように説明してきた前野氏は最後に、AIエージェントで実現したいこととして、次のように述べた(図5)。

 「AIエージェントによる当社のアプローチとして大事にしているのは、より多くの商談につながって売り上げ拡大に貢献することや、より高い顧客サポートを提供するといったカスタマーサクセスを実現することだ。今、多くの企業でAI活用のプロジェクトが進められており、多くのリソースが注入されている。さらに自社の業務に合ったAIモデルを作るためには相応のトレーニングを実施するなど、さまざまな取り組みが必要となる。Agentforceは単なるAIエージェントだけでなく、それを活用するために必要なものを仕組みとして提供している。図5で言えば、ユーザーには水面下の労力を極力かけず、水面上のカスタマーサクセスにフォーカスしていただこうというのが、Agentforceの狙いだ」

 Agentforceは単なるAIエージェントではなく、AIエージェント活用ソリューションといったところか。目的がカスタマーサクセスというのもSalesforceらしいところだ。おそらく多くのSalesforceユーザーがAgentforceを「雇う」だろう。

 そこで、AIエージェントをいち早く提供する同社に求めたいのは、ユーザーと共同で投資対効果を明らかにしてほしいということだ。投資額は公表できないとしても何らかの形で投資対効果を示す手段を模索してもらいたい。効果だけでは本当にユーザーのためになっているのかどうか分からないので、ぜひ検討していただきたい。

 筆者がこう訴える背景には、「企業にとってAIは宝の持ち腐れではないか」との見方もあるからだ。企業への投資筋もAIに対しては冷ややかに見る目も少なくない。その多くが、AIそのものに懐疑的なのではなく、企業が活用できるようになるまでには思いの外、時間がかかるのではないかと見ているからだ。そうした懸念を払拭するためにも、投資対効果がしっかりと上がっている事例を示したいところだ。SalesforceをはじめAIエージェントを提供するSaaSベンダーには、AIパワーを証明する意味でもトライしていただきたい。

○著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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