ソフトバンクのモバイル事業、官製不況を脱し増収増益に 宮川社長「本当に胃が痛い2年半」と振り返る
ITmedia Mobile / 2024年5月10日 16時57分
モバイル売上高の中期経営計画と実際の進捗
ソフトバンクは9日、2024年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年比3%増の約6兆840億円、営業利益は同17%減の8761億円だった。営業利益は前年度のPayPay子会社化に伴う再評価益の影響で減益となっており、再評価益の約2948億円を除くと14%の増益となるため、「実力ベース」(宮川潤一社長)では増収増益となった。
特に主力のモバイル事業が増収となったことで、携帯料金値下げによる影響を脱したことが貢献。モバイルの減収をカバーするために注力していたエンタープライズなどその他の事業が好調で、全セグメントでの増益となった。
宮川社長は、これまでに上方修正していた通期予想をさらに上回る業績となり、中期経営計画での予想も上回る見込みとして、予想超過分を生成AIなどの成長投資に振り分ける方針を示した。
●「ようやく」増収に転じたモバイル事業、全セグメント増益に
コンシューマー事業におけるモバイル売上高は、携帯料金4割値下げという官製値下げ以降、減収が続いていた。2023年5月の中期経営計画では2023年度を底に反転して2024年度から増収になるとしていた。ところが実際は2022年度の時点で底を打ち、2023年度に前倒しで反転して増収になった。
営業利益も同様に2022年度を底に反転する計画だったが、計画以上に利益が積み重なり、増益幅が拡大。255億円の上方修正となった。中期経営計画でスマートフォン契約数を年100万水準で純増を続ける予想が、2023年度には147万増と順調に伸びていることも奏功した。
月額料金の値下げに対して付加価値サービスや新サービスによってARPU(1ユーザーあたりの月間平均収入)を向上させる取り組みも順調で、PayPayを始めとしたグループ経済圏をさらに拡大・強化していく方針だ。
宮川社長は、携帯料金値下げ後すぐに社長就任した2021年4月以来続いていた減収から増収に転じたことについて、「2年半、本当に胃が痛い思いでありとあらゆることを勉強し、各店舗も回った」と振り返って、「長いトンネルをようやく(抜けた)」と安堵(あんど)する。
結果として他の事業も伸びてモバイルが反転し、中期経営計画の目標を上回る想定となったことで「思った以上に去年(2023年)はよかった。実は今期は本当に楽」と自信を見せる。
さらに、現在の1株を10株に分割することで投資金額を引き下げて、新たに株主優待としてPayPayポイント1000円分(1単元あたり)を進呈する。これによって実質利回りが10.1%まで拡大することで、特に若年層の個人株主層を拡大したい考え。若年層株主によって長期的な成長にとって重要だと宮川社長は強調する。
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