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スマホ×AIはどう進化すべきか Nothingのカール・ペイCEOと深澤直人氏が語る未来のプロダクトデザイン

ITmedia Mobile / 2024年7月5日 21時43分

 深澤氏が示唆的な例として挙げたのは、古い陶器の破片から全体の美しさを想像できるという経験だ。深澤氏が館長を務める日本民藝館の展示から得たインスピレーションをこう表現する。

深澤氏 昔の朝鮮時代の陶器の破片、取り出した破片を展示するものなんですよ。びっくりしたのは、その破片なのに、この壊れた陶器の破片だけを見ても、その全体がかっこよかったんだろうなと分かること。これは自分にとって初めての経験でした。

 人間の無意識的な認知プロセスが、限られた情報から全体を想像し、美的判断を下す能力を持っていることを示している。深澤氏は、この能力とテクノロジーを結び付けることで、新たな可能性が開けると考えている。

深澤氏 特に美学とか文化とかに、まだテクノロジーは出てこないので、そこがこれからもっと面白いところになるんじゃないかと。

●深澤直人氏が示したプロダクトデザインの重要なヒント

 対談の終盤、深澤氏は将来のプロダクトデザインに関わる2つの“ヒント”を示した。

 1つは、GUIの開発プロセスから学ぶことだ。

深澤氏 私がシリコンバレーで働いていたときにGUIをどうやって開発したか。最初は、紙芝居だった。プルダウンメニューが降りてきて、押すと、ジェスチャーでどう動くかというシナリオを紙芝居に書いていた。紙ですよ。紙。すごいスローなシナリオを書く時代がこの20年前まであった。

 この発言は、テクノロジーの進化と社会への浸透の速さを示唆している。わずか20年前、現在では当たり前となっているGUIの概念が、紙芝居のような原始的な方法で設計されていたことを振り返っていた。その時代の流れの速さを比喩的に表現したものだろう。

 2つ目のヒントは、未来のAIに“日本流”を取り入れるというアイデアだ。

深澤氏 日本では、システムがうまく機能しないときでも、人々は「すみません」と言います。これは単なる謝罪ではなく、不具合に対する不満や怒りを和らげる巧妙な方法です。「すみません」という言葉は、問題を自分の責任として受け止めつつ、同時に状況に対する不満をえん曲的に表現してフワッと場に調和させる機能がある。これは日本独特の興味深いインタフェースだ。もしAIがこの「すみません」の使い方を学んだらと、非常に興味深い。

 深澤直人氏とカール・ペイ氏との対談は、AIがスマートフォン、ひいてはプロダクトデザインにどのような変化をもたらすのかについて示唆的な対談となった。

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