4キャリア8社が災害時に“呉越同舟”の協定 25年度末の事業者間ローミングはどうなる?
ITmedia Mobile / 2024年12月21日 10時49分
2点目の船舶の活用は、先に挙げた能登半島地震でNTTとKDDIが協力した取り組みを拡大することを意味する。NTT、KDDIはともに海底ケーブルを敷設するためなどに使用する船舶を保有している。ここに基地局を積み、海上から一時的に地上をエリア化することで、基地局が倒壊するなどした場所を応急復旧できる。能登半島地震では、物資が運びづらかった石川県輪島市でこの船上基地局が活躍した。
「その取り組みを広げ、ソフトバンクや楽天モバイルに一緒に船に乗っていただき、被災地の通信を復旧するというのがこの施策」(森田氏)になる。文字通り、呉越同舟を可能にしていく取り組みといえる。船があったからといってすぐに船上で活動できるようになるわけではないが、ソフトバンクや楽天モバイルも含めた形で「訓練を実現できるよう、日程などの調整をしている」(同)。海に囲まれた日本では、船上基地局が活躍する場面は多いだけに、早期の対応を期待したい。
3つ目のモバイルと固定の連携強化も、災害時には欠かせない要素といえる。モバイルネットワークといっても、基地局と端末の間以外は、そのほとんどが有線でつながれているからだ。その多くは、NTT東西が保有する。能登半島地震でも、この通信ケーブルが物理的に切断されたことで基地局から先がつながらなくなってしまうケースが多々あった。ネットワーク構成上、「電波を出すアンテナから、各社の機器を置いている通信ビルまでは固定通信になる」(同)というわけだ。
そのため、災害からの復旧時にはモバイル事業者と固定通信事業者の連携が欠かせなくなる。その「窓口を整理し、どんな情報を災害時に共有すべきかの認識を改めて合わせた」(同)。また、能登半島地震では「どこが故障しているかの特定に、非常に苦労した」反省を踏まえ、将来的にはリモートで検査し、早期にケーブルの寸断箇所を特定する技術の導入にも取り組んでいくという。
●事業者間ローミングはこれから? 25年度末に向けた拡大にも期待
一方で、現状での連携はここまで挙げてきた3点にとどまる。2025年度末までをめどに導入準備が進められている事業者間ローミングについては、「協定の中に入っていない」(同)という。事業者間ローミングは、緊急通報だけでなく、一般の音声通話やデータ通信なども含めて利用が可能な「フルローミング」方式と、緊急通報の発信のみに絞った方式の2つが検討されてきたが、その両方式を実施する方向で、現在、具体的な運用や技術的な条件を議論しているところだ。
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