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なぜ360度開くスーツケースの素晴らしさは伝わりにくいのか? エース「プロテカ360」とその製造過程

ITmedia NEWS / 2024年6月28日 21時24分

●とにかく広大なエースラゲージ赤平工場

 工場は、北海道赤平市の広大な敷地内にある。かつて、サムソナイトと技術提携を結んだエースが日本で初めてスーツケースの国内生産を始めたのが1964年。当時の工場は小田原にあって、そこが手狭になったということで、1971年に現在の赤平に移転している。その後、エースは海外展開に乗り出すため、サムソナイトとの長年の契約を終了し、自社ブランド「プロテカ」を2004年からスタートさせた。

 工場の中には展示室もあり、そこにはエースの自社ブランド「プロテカ」の第一号「マニフィコ」から最新のものまでが並び、スーツケースの変遷が一目で分かるようになっている。とはいえ、スーツケースは基本的に同じような形をしているし、結局、シェルの素材と細部のデザイン以外には大きな違いはない。

 それこそ、マニフィコを今使っていても、外見上は多少デザインが個性的だと思われる以外に違いはない。普通に見過ごされると思うし、使う方も、現在の最先端のスーツケースを知らなければ、多少の不便さはあっても使い続けられるのではないか。

 それだけに、自分が使っているプロテカ360が、とても先鋭的な製品だということを感じることもできた。これだけのスーツケースを作り続けてきた上での、最新型の1つというわけで、そこに使いやすさや機能の向上がないわけがないのだ。

 例えば、今回、説明を受けて知ったのだけど、プロテカのキャスターに内蔵されたボールベアリングは現在、ミネベアミツミ製のものが使われている。この連載で取り上げたエレコムのトラックボール「IST(イスト)」に使われているのもミネベアミツミ製だったが、実際、小さなベアリングにおいて、世界有数のメーカーだ。実際、プロテカ360が、ドイツの石畳の上でも走行がスムーズだったことを思いだした。

 今回、まずは「プロテカ チェッカーフレーム」のシェルの成型過程を見せてもらったのだけど、これが何と射出成型かと思っていたら、ルーダーで素材をシート状に成型したものを加熱し、金型に開けられた無数の極細の真空穴から強い力でバキュームし、圧空、真空状態にして金型(凸)に沿わせることで製品の形を作る「真空成型」で作られていた。

 この真空成型が面白いのは、2種類の素材を、それぞれ薄いシート状にして重ねてから成型していたことだ。表側は、昭和生まれの方にはお馴染、「象が踏んでも壊れない筆箱」でも使われているポリカーボネートとABS樹脂を混ぜたオリジナル樹脂。外側にはバージン材を使用し、内側には真空成型後にシートの不要部分をカットして粉砕したリサイクル材を使っているのだ。これなら、見栄えの良い仕上がりにしつつ、リサイクルも行える。

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