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なぜ360度開くスーツケースの素晴らしさは伝わりにくいのか? エース「プロテカ360」とその製造過程

ITmedia NEWS / 2024年6月28日 21時24分

 ロールになった大きな布を数枚から数十枚、布の厚さや素材に合わせて重ねたものを、バキュームで台に密着させて、CADデータ通りに自動的に布を裁断していく。重ねた布を真っ直ぐに切るわけで、裁ちばさみの切れ味を知っているから、余計に、この機械の刃はどうなってるんだろうと思う。

 組立工程では、一気に職人の世界になる。中でも「プロテカ360」の最大の特長である、ケースを一周するジッパーの取り付けが、手作業のミシンで行われていることに驚く。

 いや、他にやりようがないのは分かっていたのだけど、それでも、どのような開け方でもスムーズに開閉できるジッパーを日ごろ使っているだけに、あの精度を人の手で実現していることに驚いたのだ。前述したように、360度開く機能は、私にとってはなくてはならない機能だ。その割に、あまりパクられている様子もないのを不思議に思っていたのだけど、これは低価格での実装は無理だと、そのジッパー取り付けの工程を見て納得した。

 プロテカ360は、一般的なジッパースーツケースと異なり、ジッパーが1周縫いの作りになっているので、作りが難しく、高い技術を要するのだそうだ。実際、手で支えて、ぐるりと縫い付けていたのだが、一日何百個と作られる製造ラインの中では、じっくりと取り付けるというわけにはいかないから速度も必要になる。私たちが見た方は、新人でまだまだ遅いと言われていたのだけど、それでも十分に驚ける速度だった。

 内装の貼り付けも、糊付けこそ機械が行うけれど、そこに布を広げて、ぴたりと貼り付けていく作業は手作業なのだ。確かに、これも機械でやろうとしたら、とんでもなく巨大なものが必要になりそうだが、それにしても、その手際は手品のようだった。

 エースさんにいただいた資料によると、「一般的なスーツケースの内装生地はミシンで縫い付けるだけですが、プロテカではクッション製のあるウレタン生地を手貼りして仕上げる製品も多く、素早く美しく貼り付けるには高い技術を要します(技術の習得に早くて3年掛かります)。手貼り内装は赤平工場ならではの特徴で、海外製との大きな違いです」ということだ。

 思わず、帰宅したあと自分のスーツケースの内装をしみじみ見てしまった。こういう工程を見ていると、スーツケースは一般的なブリーフケースやトートバッグの内装貼りと同じような作業を、より巨大なスペースで行わなければならないということをあまり意識していなかったことに気がつく。

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