1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

なぜ? 地方で進み始めた「脱・交通系ICカード」の流れ その切実な事情とは

ITmedia NEWS / 2024年7月31日 13時35分

 「更新期限は26年3月となっており、4月以降の切り替えに対応できるよう検討を進めているが、現時点でどのタイミングまでに結論を出して、実際に切り替えるのか具体的な時期は見えていない」(熊本市交通局)と担当者はコメントする。

 ただ報道で示された情報を見る限り、(全国共通の)交通系ICカードを維持した場合の更新費用が約2億円として、廃止した場合の更新費用が約1.1億円なのに対し、今回提案された簡易端末採用時の更新費用が約1.9億円と、ほとんど費用削減効果が見られない。

 理由として考えられるのが、いくら簡易端末であっても(全国共通の)交通系ICカードを読み取るという仕様はそのままで、基本的な費用感に変化はない。唯一の違いが、車内チャージを可能にするための「運賃箱の操作端末の“チャージ対応”改造費用」であり、つまりは(全国共通の)交通系ICカードを採用すること自体が高い費用感につながっていることの証明となっている。

●「10カード」と「地域限定」の違い

 熊本市のケースで、交通系ICカードについてもう少しだけ掘り下げていく。Suicaを含む全国共通の交通系ICカードは「10カード」とも呼ばれ(『PiTaPa』を含む全国の主要交通系ICカードが10種類あることから)、熊本市電はこのうちの西日本鉄道らが中心となって発行している「nimoca」(ニモカ)を14年に「でんでんnimoca」として採用し、全国共通の交通系ICカードの受け入れに先鞭をつけている。

 一方で前述の熊本市を中心に運行するバス・鉄道5社は「くまモンのICカード」を15年から利用開始した。正式名称は「熊本地域振興ICカード」であり、地域の公共交通や小売店での利用が可能な“地域限定”のICカードとしての扱いだ。カードの規格としてはFeliCaで共通なものの、後述する「サイバネ規格」をベースとした10カード”の仕様とは異なっており、両者に相互共通性はない。

 ただし、これでは九州内を含む他の地域の交通系ICカードは使えず利便性の面で劣るため、16年にJR九州との提携で前述5社の運行する公共交通機関でJR九州の発行する10カード「SUGOCA」の受け入れを開始し、結果としてSuicaを含む他の地域の10カードの利用が可能になった。

 16年から開始したSUGOCAの受け入れは「片利用」と呼ばれるもので、10カードを5社の運行する公共交通機関で利用可能なものの、その逆のくまモンのICカードを他の10カードの営業地域では利用できない。なお、これではでんでんnimocaを採用する熊本市電にくまモンのICカードでは乗れないことも意味しており、JR九州との提携に先駆ける形で、熊本市電側では15年に「くまモンのICカード」を受け入れる連携を開始している。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください