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なぜ? 地方で進み始めた「脱・交通系ICカード」の流れ その切実な事情とは

ITmedia NEWS / 2024年7月31日 13時35分

 2つ目は日本鉄道サイバネティクス協議会の存在だ。日本鉄道技術協会の特定部会であり、前出の「サイバネ規格」はここで定められている。「片利用」を含め10カードへの対応を行う場合、同協議会に参加して年会費を支払う形となるが、おそらく最大の問題となるのは会費そのものよりも、前述の「メインテナンスなどを含むサイバネ規格を維持するためのさまざまなコストや手間」にあると思われる。

 ある情報源は、以前に「『サイバネ規格』はそこで負担した費用が中核にあるJR東日本を中心とした大手に流れる仕組みになっており、これを嫌ってわざと独自仕様の交通系ICカードを導入する地方の事業者がいる」と述べていた。これは極端な例だが、いずれにせよ会社の体力に見合っていない負担が強いられるケースが、特に地方の事業者に多いというのもまた事実かもしれない。

 熊本放送(RKK)の報道によれば、今回話題となった5社の場合、くまモンのICカードの利用割合が全体の半数強、10カードは25%で、残りが現金による支払いだという。今年いっぱいで10カード分の数字がまるまる抜ける形となるが、来春にはクレジットカードによるタッチ乗車がスタートするため、おそらくその多くを吸収できるだろう。

 「子どもや高齢者はどうするんだ」という意見も聞かれたが、そもそも域内ではくまモンのICカードが有効であり、過半数がこの利用者であることを考えれば、地域交通の利便性を高める仕組みとしては十分に機能している。むしろインバウンドなどの利用を見据えれば、今後は域外からの訪問者はクレジットカードやデビットカードなど、“タッチ決済に対応したカードやスマートフォンを持ち込むことが主流になっていくだろう。

 カードを持たない人はQRコードの乗車券も用意されるので、家族などでのグループ移動でもそこまでの混乱はないと予想する。「タッチ乗車は反応が遅い」という人もいるだろうが、地方の交通機関に秒未満の反応速度が必要だろうか?

●どうなる? Suicaなどの「10カード」のゆくえ

 むしろ、今後考えるべきなのはSuicaなど10カードの行方だ。およそ7~10年単位で運賃箱や改札などの更新サイクルがやってくることを考えれば、先ほど石塚氏が触れていたみたいに地方交通を中心に10カード対応を切り捨てるケースが続出し、2030年ごろには「地方の公共交通機関で10カードが使えない」というケースも珍しくない可能性が高い。

 Suicaがデビューして間もなく四半世紀が過ぎるが、技術的にはむしろ枯れたといえる状況にあり、今後10年先を見据えてどのような姿で国の公共交通機関の運賃収集システムを構築していくか、改めて考えなければいけない段階になりつつある。

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